
腎臓病の治療のためには「安静第一」が常識とされていたのは昔の話。むしろ、寝たきり生活によって驚くほどの筋肉量が失われるということをご存知だろうか。腎臓のリハビリを専門とする医師が、健康寿命を伸ばすためのメソッドを説く。※本稿は、上月正博『東北大学病院が開発した 弱った腎臓を自力で元気にする方法』(アスコム)の一部を抜粋・編集したものです。
腎臓リハビリで得られる
うれしい相乗効果とは
「リハビリ」と聞くと、病気になった人や大きなけがをした人が、もとの日常生活に戻れるよう社会復帰を促す訓練のイメージを持つ方がほとんどだと思います。
もちろん、腎臓リハビリ(編集部注/腎機能の回復や維持、腎臓病予防を目的とした治療法)も退院後すぐに不自由なく生活したり、腎臓病や透析療法で通院する患者さんの身体的・精神的影響を軽減し、生命予後を高めたりすることを目的に創設され、今日まで発展してきた背景があります。
しかし、現在では体力回復を促すトレーニング、あるいは腎機能の改善を目的とした介入にとどまりません。さまざまなうれしい相乗効果をもたらします。
そんな腎臓リハビリの効果のひとつに「生活習慣病の改善」がありますが、これは現代人にとってとても魅力的な特効薬といえるでしょう。
慢性腎臓病の大敵である糖尿病(高血糖)と高血圧症(高血圧)は、生活習慣病のなかでも上位を占める有病者数を保持しており、これに脂質異常症(高脂質)を加えた3つがリスク因子として問題視されています。
そして、このどれかひとつに罹患(りかん)すると、残り2つも誘発される可能性があり、それぞれが連鎖的に血管の状態を脅かすことから“トリプルリスク”とも称されています。