電車を待つ人々写真はイメージです Photo:PIXTA

近年、SNSなどで電車内での迷惑行為やマナーについての話題が頻繁に上るようになった。女子高生と中年男性が電車内で口論し、電車が約40分遅れ、約900人に影響した事例もある。「電車内で迷惑だなと思うこと」のワースト3を発表するとともに、駅ホームでの一触即発のケンカを、見事な「ひと言」によって一瞬で鎮めた事例を紹介する。(鉄道コラムニスト 東 香名子)

電車でイラッとされる迷惑行為
ワースト3は…

 電車を利用する際、迷惑行為やマナー違反に不快な思いをした経験はないでしょうか。

 近年、SNSなどでこうした問題が頻繁に話題に上り、多くの人が快適な移動を妨げられていると感じています。また海外からのインバウンド客も増え、思わぬマナー違反に遭遇し、イラッとする機会が増えた人も多いのではないでしょうか。

 私が所長を務める、鉄道トレンドに関する調査を行う機関「鉄道トレンド総研」は、306人の男女を対象に「電車内で迷惑だなと思うこと」について調査をしました。

 その結果「迷惑だ」と思われていることワースト3が「大声での会話」「座席の座り方(詰めない・足を伸ばすなど)」「配慮のない咳(せき)やくしゃみ」と続きました。

 もっとも多くの人が迷惑だと回答したのは「大声での会話」(53.9%)でした。回答者の実に半分以上が不快感を示し、話し声の大きさを気にしている実態がわかります。この結果は、控えめで静寂を重んじるという日本人の国民性を強く反映していると言えるでしょう。

「察する文化」「和を尊ぶ精神」に
反する行為が強いストレスの種に

 日本には、公共の場では周囲に配慮することが美徳とされ、「察する文化」や「和を尊ぶ精神」が根付いています。そのため、列車内で知らない人の声が大きく響くことは、静かに移動したいというニーズを阻害するだけでなく、こうした文化的な価値観に反する行為として、強いストレスの種となるのです。

 次いで迷惑だと感じられているのは「座席の座り方(詰めない・足を伸ばすなど)」で48.4%。限られた車内空間で、座席を広く占有したり、足を伸ばしたりする行為はほぼ半数の人に嫌がられています。通路の妨げにもなるため、ときに危険なこともあります。

 そして、3位には「配慮のない咳やくしゃみ」が48.0%で続きました。コロナ禍以降、飛沫(ひまつ)感染への意識が高まっています。マスクを着用せずに咳やくしゃみをする行為は、今や重大なマナー違反。衛生面だけでなく精神的な不安も引き起こされます。

 これらの結果は、単に個人のマナーの問題に留まらず、電車という公共空間における相互理解と配慮について改めて問いかけるものと言えるでしょう。