そして、5年後の2023年には、「志(パーパス)」を「アミノサイエンスで人・社会・地球のWell-beingに貢献する」にアップグレード。さらなる成長に向けて、大きく舵を切った。アミノサイエンスの力を基軸に、半導体材料や再生エネルギーなど、「食と健康」以外にも大きくピボットしていく覚悟が生まれてきたからである。
パーパスそのものを5年で進化させる企業は、そうざらにはないだろう。しかし、「スピードアップ&スケールアップ」を行動原理(プリンシプル)とする味の素は、何の躊躇もなくパーパス2.0へと舵を切っていった。パーパスをいつまでも額縁に飾っている企業は、味の素のこのしなやかな身のこなしから、シン日本流経営の妙技を学んでいただきたい。
「勝てる組織」に備わっている
「ハードパワー」とは?
もう一つのハードパワーは、組織力を持続的に進化させ続ける装置である。たとえば現場で生み出された知恵(たくみ)を、型(しくみ)に落とし込み、組織全体に伝播させるアルゴリズム。本連載で紹介したキーエンスが、最も得意としている組織能力である。
例えば、キーエンスでは営業活動に関して、多くの行動指針や指標が厳格に定められている。
・定量行動管理(コール数・コール時間・訪問数・有効商談数などのプロセスKPI管理)
・商談ごとの準備フォーマット(利用用途・購入理由・購入時期・購入余地・キーパーソンなどの確認)
・ガイホー(外出・出張報告)の準備(前日までに1分単位で記載)
・商談の話の進め方の型化(60分の商談時の会話内容の指導)
・上司による確認電話(上司が営業担当の代わりに確認の電話をする)
・不要な行動の徹底排除(ネットサーフィン等の禁止)
このような徹底したガイドラインの下で、各人が創意工夫を凝らして商談を進めていく。プロスポーツチーム並みの規律があるからこそ、各メンバーのパフォーマンスが上がるのだ。
※詳細は本連載の記事『キーエンスに「仕事ができない営業マン」がいない理由、“普通の社員”も必ず育つ方程式とは?』をご参照ください。