蘭子と八木が急接近、「一生恋愛しない」は絶対?

「蘭子、恋をしちゅうがやないろうか」
のぶの問いに、嵩は「え、誰に?」と驚く。
ちょうど八木と子どもたちの絵を嵩が描いているところで、のぶが「誰って」その絵に視線を動かして、「え 八木さん?」と気づくが「それはないんじゃないかな」と否定。
このときの嵩のリアクションもコミカル。最近の嵩は先週の「もう辞めてるわ」というノリツッコミからずっとコミカルになっている。漫画への強い思いが彼の日常の動作も漫画調にしているのかもしれない。
そこにガラッとドアが開き、蘭子が顔を出し「ご心配なく。私は一生恋愛らはせんので」とこわい顔で断言する。朝ドラ名物立ち聞き。コメディ調になっているが、ひたひたと恋の予感が……。
八木に映画批評を批判されて、蘭子は八木のことが気になりはじめていた。
八木は蘭子の批評を、はじめの頃は良かったが、近頃は読者の受けを狙って、けなしてばかりいると指摘。蘭子は読者の目を引くためには仕方ないと開き直るが、内心、図星を突かれたと思っているようだ。
この流れは、明らかに、最近のネット批評と受け取れる。あら探しばかりして作品や俳優をこきおろす。それでいいのかと。いいわけないのは明白だ。
でも、この時代の映画雑誌の評論家にそんな人はいただろうか。映画愛にあふれ、辛口を書くにしても愛ゆえだったのではないだろうか。読者に受けるから偽悪的に書くというのはもっと文化が飽和状態化してからではないだろうか。確かな資料がないのでこれも言い切れないけれど。
蘭子はカチンと来て、八木こそいつもニヒルだと言い返す。
のぶと嵩に、蘭子は八木が「人が気にしていることをグサッとえぐるように言う」のはなぜかと尋ね、彼もいろいろ大変なのだと聞いて反省する。それを謝罪にいった折、八木の家族が空襲で亡くなったことを知ることになる。
蘭子と八木は世の中を斜めに見る性分が似ているし、「絶対」がないことを痛いほど知っている同士としても気持ちが近づいてきて見える。これはもう運命の出会いとしか思えない。
絶対という言葉が好きじゃない蘭子にもかかわらず「一生恋愛しない」という言い方には「絶対」を使ってはいないが、絶対しないという決めつけのニュアンスがこもっている。絶対なんてないのだから、一生恋愛しないと決めつけなくてもいいと思う。
ただ、このドラマ的には、あまりに蘭子と豪との関係がすてきだったので、彼を生涯思い続けるという選択にも憧れてしまうのだ。