引継ぎ拒否、SNSに悪口も…会社を壊す“リベンジ退職”を未然に防ぐ「2つの対策」とは?写真はイメージです Photo:PIXTA

「引継ぎもせずに退職してしまう社員がいる……」。心当たりはないでしょうか?近年、会社への不満を「仕返し」としてぶつける「リベンジ退職」が増えています。リベンジ退職が及ぼす影響、未然に防ぐために会社が取るべき対策について解説します。(特定社会保険労務士、大槻経営労務管理事務所 和賀成哉)

リベンジ退職はなぜ起きるのか~IT企業編~

 IT企業で働く入社5年目の佐藤さん(仮名)が、休日に友人とランチをしていたときのこと。友人から、「元気ないね。最近、仕事忙しいの?」と聞かれた佐藤さんは思わず、職場で起きている大問題を告白しました。

「実はね、ひとつ下の後輩が突然辞めちゃって……。繁忙期なのにその後輩の分の仕事もやっているから、すごく忙しいの。突然辞めたから引継ぎもできなくて、私が探り探りでやっていてさ。しかも、大事なデータを全部削除しちゃったみたいで!せめて残しておいてくれれば良かったのに……」

 友人は、「災難だね……その辞めた後輩、普段から会社の不満とか言ってたの?」と返しました。すると、佐藤さんは「後輩が言っていたことなんだけどね」と前置きしながら、こう続けます。

「就活のときは『挑戦を応援する環境』と言っていたのに、実際はキャリアップにつながる挑戦はさせてくれないし、スキルアップの機会もないじゃないか……」

「面談で上司に、長時間労働は嫌だしサービス残業は違法。人を採用してほしいと言ったら、『そうだな』と約束してくれたのに、何も変わってない……。ていうか最近さらに仕事量が増えて残業が悪化しているし」

「この業務をやってくれたら評価アップは間違いなしって言われたから無理してやったのに、むしろ評価が下がってるってどういうこと!? 全然納得できない」

 聞かされた友人もビックリです。さらに驚くことに、話の流れで佐藤さんの会社名をSNSで検索すると、「この会社はマジでブラック企業」「絶対に入らない方がいい」などのコメントが出てきました。

 思わず友人は、「もしかしてその後輩が、会社を辞めて“仕返し”してるんじゃない?」と佐藤さんに言いました。SNSで自社の悪口が拡散されているのを見た佐藤さんも動揺し、今にも泣き出しそうです。友人は、〈リベンジ退職じゃん〉という投稿でスマホのスクロールを止めました。「リベンジ退職って何だろう……」。思わず二人は顔を見合わせます。