「初値買い」の熱狂から一歩引いてみる

IPO銘柄は上場直後、大きな注目を集めるため、株価が乱高下しがちです。特に公募価格を大幅に上回って初値がついた銘柄は、お祭り騒ぎのような熱狂に包まれます。

しかし、百戦錬磨の投資家でさえ、この熱気の中で冷静な判断を保つのは至難の業です。

だからこそ私は、上場直後の「ご祝儀相場」にはあえて乗らず、値動きが少し落ち着くのを待つことをお勧めします。

上場から数週間、あるいは数ヶ月経つと、その銘柄本来の需給バランスが見え始め、チャートにも一定の傾向が現れてきます。

熱狂が冷めた後でも、本当に将来性のある企業であれば、必ずエントリーチャンスは訪れるのです。慌てて高値掴みをしてしまうリスクを避けるだけでも、勝率は大きく変わってくるはずです。

徹底した損切りルールこそが命綱

私がRidge-iで大きな含み損を抱えたのは、事前の予想を信じすぎたことと同時に、損切りが遅れたことも大きな原因でした。「いずれ戻るだろう」という淡い期待が、損失を拡大させてしまったのです。

「やられたらやり返す」という精神も大切ですが、それは無計画なナンピン買いとは全く異なります。「ここまで下がったらいったん手仕舞う」という明確な損切りラインを、買う前に決めておくのも一手です。

例えば、「買値からマイナス8%で損切り」「この支持線を割り込んだら売る」といった自分なりのルールです。IPOセカンダリーのようなハイリスクな投資では、この損切りルールが、予期せぬ暴落からあなたの貴重な資産を守る唯一の命綱になります。

損失を最小限に抑えることで、次のチャンスに資金を投じることができるのです。

「自分なりの根拠」に勝るものはない

私が投資対象を「10社に1社」まで絞り込むのは、その企業のビジネスモデルや将来性について、誰かに説明できるレベルまで深く理解したいこともあります。

目論見書を読むのはもちろんですが、その企業の製品やサービスが、私たちの生活や社会をどう変える可能性があるのか、競合他社と比べて何が優れているのかを自分なりに調べ、考え抜きます。

結局のところ、市場の不確実性に立ち向かう最後の砦は、「この会社は成長するはずだ」という自分なりの確固たる根拠です。

他人の予想や推奨銘柄に頼るのではなく、自らの足で集めた情報と分析に基づいた投資判断こそが、長期的な成功の鍵を握っていると、私は確信しています。

※本稿は、『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え 資産18億円を築いた「投資術」』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。