「もう株なんてやらない」の前に…大負けした時こそ市場から完全に降りてはいけない理由
テレビ・ネットで「日本のウォーレン・バフェット」と話題! 1936年(昭和11年)、兵庫県の貧しい農家に4人兄弟の末っ子として生まれた。高校を出してもらってから、ペットショップに就職。そこでお客だった証券会社の役員と株の話をするようになったことがきっかけで、19歳のとき、4つの銘柄を買ったのが株式投資の始まりだった。バブル崩壊では10億円あった資産が2億円にまで激減。しかしあれから70年、89歳になった今、資産は23億円以上に増え、月6億円を売買しながら、デイトレーダーとして日々相場に挑んでいる。隠しごとなしに日常生活から投資法まで全部書いた話題の書『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え 資産18億円を築いた「投資術」』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋もしくは編集したものをお送りする。“小説形式”だからスラスラ読めて、プロの儲かる知識がドンドンわかる待望の続編は、『89歳、現役トレーダー 大富豪シゲルさんの教え』(ダイヤモンド社)。

【株で勝てない】あなたを蝕む「負けの再現性」とは? プロが実践する“負けノート”の凄い効果写真:川瀬典子

負けから学ぶ「再現性」の追求

私が「なぜ負けたのか」をノートに記録するのは、単なる反省文を書くためではありません。そこに「再現性」を見出すためです。

もちろん、悪い再現性ですよ。「こういう思考パターンに陥ったとき」「こういう市場の熱気に煽られたとき」、自分は決まって判断を誤る、という負けのパターンを客観的に知るためです。

例えば日医工の件。私は「ジェネリック最大手」という過去の栄光と、「株価がここまで下がったのだから、これ以上は下がらないだろう」という根拠のない期待にすがってしまいました。

しかしノートを見返せば、過去にも似たような理由で、業績が悪化している銘柄に手を出して失敗した記録がいくつも出てくるわけです。

「安くなったから買う」のではなく、「なぜ安くなっているのか」という根本原因を徹底的に分析する。その企業が抱える問題は、時間が解決してくれる類のものなのか、それとも致命的なものなのか。この見極めが甘かった。

この「負けのパターン」を自分に深く刻み込むことで、次に同じような局面が訪れたときに、「待てよ、これは以前の失敗と同じ轍を踏むぞ」と、冷静な自分を取り戻すことができるのです。

「損切り」とは、未来への投資である

「損切りが大事だ」なんてことは、誰もが頭では分かっている。しかし、いざ自分の身に降りかかると、これが本当に難しいものです。

含み損を抱えた銘柄の株価を見るたびに、溜め息をついている人も多いでしょう。

ここで発想を転換してほしいのです。損切りは、失った資産を確定させる行為ではありません。その資金を、塩漬けになった“非生産的な場所”から解放し、次なる成長が見込める“生産的な場所”へと移すための「未来への投資」なのです。

クヨクヨして含み損を抱え続けている間にも、市場では次々と新しいスター銘柄が生まれ、大きなチャンスが転がっています。

限られた投資資金を、可能性のない銘柄に縛り付けておくことこそ、最大の機会損失だと思いませんか。

損切りで生じる痛みは、より大きなリターンを得るための必要経費、いわば「次の試合への入場料」のようなもの。そう割り切れるようになれば、投資家として一段階上のステージに上がれるはずです。

市場から完全に降りない勇気

バブル崩壊で大いにやられたとき、私は少し株から距離を置きました。これは大事な点で、「完全にやめた」わけではないのです。

大負けすると、恐怖心から「もう二度と株なんてやるもんか」と市場から完全に退場してしまう人がいますが、これはもったいない。

相場というものは、常に動いています。完全に市場から離れてしまうと、その値動きの感覚、いわゆる「相場観」というものが、あっという間に鈍ってしまいます。そして、いざ次のチャンスがやってきたときに、怖くて一歩も踏み出せなくなってしまう。

だからこそ、たとえ少額でもいい。1単元未満株でも構いません。市場に身を置き続け、自分が関心を持つ銘柄の値動きだけでも追い続けることが重要なのです。

そうすることで、市場の熱や冷え込みを肌で感じ、次の大きな波に乗るための準備を怠らずに済むのです。

嵐が過ぎ去るのをただ待つのではなく、次の航海に備えて船を整備し続ける船乗りのように、常に市場と対峙し続ける姿勢が大切です。

最後に信じるべきは「自分の物差し」

結局のところ、株式投資は「自分との戦い」です。有名なアナリストのレポートも、インフルエンサーのおすすめ銘柄も、あくまで参考情報に過ぎません。

最終的に投資の決断を下し、その結果の全責任を負うのは、他の誰でもない、あなた自身です。

数々の失敗と反省を繰り返し、自分なりの「勝ちパターン」と「負けパターン」を蓄積していく。

その経験を通じて、「自分はこういう基準で銘柄を選び、こういうタイミングで売買する」という、揺るぎない「自分の物差し」を作り上げていくこと。これこそが、株式市場という荒波を生き抜くための、最強の武器になります。

負けは決して終わりではありません。むしろ、自分だけの物差しを磨き上げるための、最高の砥石です。一つ一つの負けを糧として、より強く、賢い投資家へと成長していく。

その繰り返しこそが、投資家としての「筋」を通すということなのだと、私は信じています。

※本稿は、『87歳、現役トレーダー シゲルさんの教え 資産18億円を築いた「投資術」』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。