このような背景から、「老害」という言葉が生まれ、上の世代によるポジションの独占や変化への抵抗が批判の対象となるのです。
しかしながら、すべての高齢者がこのような行動を取っているわけではなく、経験や知識を活かして組織に貢献している方も多く存在します。
重要なのは、年齢に関係なく、能力や成果に基づいて適切なポジションが与えられる仕組みを整えることです。また、世代間のコミュニケーションを促進し、互いの価値観や経験を尊重し合うことで、組織全体の健全な発展は十分に期待できるはずです。
そう考えてみると、「老害」という言葉は、問題の本質を正しく表現していないばかりか、年齢に対する偏見や差別的な考え方を助長してしまう可能性を秘めていることがわかるのではないでしょうか。
老害という発想がない国では
年寄りが国を動かすほど活躍
海外に行くと、「老害」という概念を感じることはほとんどありません。
たとえば、アメリカ合衆国の大統領を見てみましょう。2021年1月20日に第46代大統領に就任したジョー・バイデン氏は、大統領に就任時の年齢が78歳と61日で、これはアメリカの大統領として史上最高齢だと話題にもなりました。
しかし、その記録を上回ったのが、2025年1月20日に第47代大統領として再就任したドナルド・トランプ氏。彼が大統領に就任した時の年齢は78歳と7カ月でした。
彼らの政治家としての手腕には賛否両論があるものの、その理由として年齢を挙げる風潮はほとんどありません。
また、科学者の世界でも、「老害」という考え方は存在しないと言ってもよいでしょう。
2020年に「ブラックホールの形成が一般相対性理論の確固たる予言であることの発見」を理由にノーベル物理学賞を受賞したイギリスの数理物理学者、ロジャー・ペンローズ博士。受賞時の彼の年齢は89歳です。
2025年現在、90歳を超えてもいまだ現役研究者として活躍を続ける彼のことを、「老害」と呼ぶ人は誰もいないでしょう。