5分のタイマーが鳴ったら、深呼吸して「それは変えられない」とつぶやく。これはシンプルだが強力なリマインダーだった。

 起こったことを変えることはできない。人生をありのままに受け入れ、前進するために行動を起こすしかないということが実感として受け入れられるようになったのだ。

自分史上最悪な事態が起きても
5分ルールを遵守した

 怒りを感じたときはいつでも、携帯電話を取り出してタイマーをセットした。反射的に手が動くようになり、結果がついてきた。以前は5分以上動揺していたのに、受け入れて穏やかな気持ちになるまでの時間がどんどん短くなってきたのだ。

 そして、大きな変化が起こった。「5分ルール」を使い始めて2週間後、僕はセールスのキャリアで最大の挫折に直面した。

 それは日曜日の夜だった。その朝、週の売り上げ目標額に2000ドル足りないことに気がついた。締めは月曜日の朝なのだが、1日で1000ドル売るのは大変なことであり、必要な2000ドルを日曜日のうちに売るのは無理だと思った。

 しかし、その日の午後に2人のアポを入れることができ、最初の人は何も買わなかったものの、2人目が2300ドルを超える注文をしてくれて、その週の目標を超えたのだ。

 僕はメンターのジェシーに電話をして、興奮しながらこのニュースを伝えた。彼は、僕が目標を達成しただけでなく、この注文のおかげで今週の売り上げナンバーワンになったと教えてくれた。僕は大喜びだった。

 次の1時間は、水曜日の夜のチーム会議のことを想像していた。ジェシーが僕を今週の売り上げナンバーワンだと発表してくれるだろう。僕は、手数料で稼いだお金をどう使おうかと考えた。

 そして午後9時頃に僕の電話が鳴った。さきほどの注文をした女性からで、「夫が怒っていて注文をキャンセルしたい」という申し出だった。なんとか思いとどまってもらおうとしたが、彼女の決心は固かった。

 ほんの数時間前、最高額の注文を喜び、目標を達成して、今週の売り上げナンバーワンになったというのに、そのすべてが消え去り、脳内で使い道を考えていたお金も入らない。