私自身、新入社員のときに、コンピューターの障害を受け付ける部署にいたことがあります。一日中、お客様からの電話が鳴り続けるなか、ストレスでぐったりすることもありました。頭は重く、何をしても楽しくありませんでした。

 そのようなときには、自宅に帰った後、自分だけの時間をつくり、お抹茶を点てました。

 お茶碗に鮮やかな緑色のお抹茶とお湯を入れ、シャカシャカと心地よい茶筅の音を聞きながら、お茶を点てることに集中していると、心のなかでざわざわとしていたものが静かに穏やかになりました。

 そして一服のお茶をいただく頃には、心がほっと癒されて、ストレスが緩和されていくのを感じることができました。

 心を整える方法として、ヨガや瞑想などが浮かぶ人もいるかもしれませんが、茶道もこれらと同じように、「集中」「静寂」「リズム」を通じて心に働きかけ、整えてくれるのです。

 茶道というと、日本文化の象徴として格式が高いイメージがあるかもしれません。でも本当は、もっと気軽に日常的に楽しめるもの。

 一碗のお茶を丁寧に点てること、ただそれだけで十分に茶道の魅力を味わうことができます。自分の心が凝り固まっていると感じたとき、ちょっとしたストレッチをするようにお茶を点ててみる。

 そんな小さな習慣が、心を軽やかにしてくれるのです。

 お茶碗と茶筅さえそろえれば、茶道はすぐに始められます。お気に入りのマグカップをお茶碗の代わりにしてもいいでしょう。まずは、一碗、心を落ち着かせてお抹茶を点ててみてはいかがでしょうか。