《国営新華社通信は「戦争の『加害責任』と『不戦の誓い』に触れなかったのは驚愕させられる」「世界は安倍政権の憲法改正と右傾化を阻止しなければならない」などと批判しました》(テレ朝NEWS 2013年8月16日)

 今回の石破首相の式辞も「加害責任」には触れていない。朝日や毎日のミスリードによって、石破首相がなにやら急に「土下座外交」のようなことを始めたように誤解をしている人も多いが、実は安倍元首相以降の歴代の方針を踏襲した極めて「無難な式辞」なのだ。

 …なんてことを言うと、愛国心あふれる人たちの中には「何が無難だ!日本の首相が戦争を語る文脈で“反省”を口にすることがどれほど危険なことかわからないのか!」とキレてしまう方も多いだろう。しかし、実はそこにもミスリードがある。

 皆さんが「中韓に強気な姿勢を貫いた保守政治家」として今も心の拠り所にしている安倍晋三元首相も「戦後70年首相談話」のなかで「反省」をちゃんと口にしている。この姿勢は日本政府として揺るぎないと明言しているのだ。

 我が国は、先の大戦における行いについて、繰り返し、痛切な反省と心からのお詫びの気持ちを表明してきました。その思いを実際の行動で示すため、インドネシア、フィリピンはじめ東南アジアの国々、台湾、韓国、中国など、隣人であるアジアの人々が歩んできた苦難の歴史を胸に刻み、戦後一貫して、その平和と繁栄のために力を尽くしてきました。

 こうした歴代内閣の立場は、今後も、揺るぎないものであります。(2015年8月14日 内閣総理大臣談話

 冒頭で筆者が「反省の2文字にそこまで目くじらを立てるべきではない」と申し上げたのは、これが理由だ。

 石破首相が「反省」を口にしているのは、親中でも反日左翼だからでもない。安倍元首相が70年談話の中で述べた「痛切な反省と心からのお詫びを表明してきた歴代内閣の立場は今後も揺るぎない」というスタンスを踏襲しているに過ぎないのだ。