キャストをなじる
通称「ミニーおばさん」
アドベンチャーランドにある「シアターオーリンズ」で行なわれるステージショー「ミニー・オー!ミニー」を毎日のように鑑賞している女性がいる。年齢は50歳くらいでいつも日傘をさしていた。
通い詰めていると、キャストのあいだでも評判が広がる。彼女はキャストたちのあいだで通称「ミニーおばさん」と呼ばれていた。
頻繁に通ってくるマニアは多いので、これだけならさして不思議でもない。しかし、この「ミニーおばさん」、カストーディアルキャストを見るとわけもなく、「邪魔だからあっちに行け!」などとなじるというのだ。
ランチの際、同僚の木下君(仮名)から声をかけられた。「今日も朝の9時すぎから『ミニーおばさん』が来ていましたよ。昼までずっと同じ場所に立っていて。今日なんて暑いからたいへんだと思うんですけどね」
「そう、今日は『ミニーおばさん』、静かに見ているだけだった?」
「いいえ。近くを通ったら、『シッシッ』と言われて追い払われましたよ」木下君が困ったように顔をゆがめた。
「『邪魔だ』ってなじられなかっただけ、よかったんじゃない」
「ハハハ。でも犬じゃないんですからねえ。僕だって傷つきますよ」
ディズニーが好きで、楽しもうと思って来園しているのに、そこで働くキャストを目の敵にしているというのも不思議である。
実際に自分がこんな扱いをされれば、その日1日を嫌な気分ですごすことになる。「君子危うきに近寄らず」、私はできる限り、彼女のそばには近寄らないようにするのだった。