大谷翔平選手大谷翔平選手という“日本最強のコンテンツ”に巨額投資をするネットフリックスは、すぐにこれを回収できるという Photo:JIJI

前編では、巨額なWBC独占配信権を獲得したNetflix(ネットフリックス)と日本のテレビ局のビジネスモデルの違いを分析。ネットフリックスが150億円の“投資”を回収できること、そもそもテレビ局にはWBCの放映権を買う資金的余裕がないことがわかった。後編となる本稿では、より具体的にネットフリックスの投資回収戦略について分析している。GAFAMにも負けず劣らずの天才経営陣たちは、WBCと大谷翔平を使って、どのように日本で有料会員数を爆増させるのか。同社が日本市場を開拓し切った後にやってくる、残酷な未来とは――。(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)

ネトフリが使ってきそうな
価格戦略3パターン

 さて、前編ではネットフリックスの最低料金プランが月額890円だと言いましたが、WBCの期間、ネットフリックスはどう料金を設定するでしょう?この後正式に発表されると思いますが、可能性としては3通り考えられます。

1. 通常通り月額890円から
2. WBCに限って無料開放する
3. WBCに限って特別料金、たとえば一試合の視聴ごとに2000円のようなオンデマンド視聴料金を設定する

「いやいや3番目の選択肢はありえないでしょう?」と思いますよね。今回に限れば私も3はないと思いますが、最後にこの話は逆転しますので覚えておいてください。

 これまでの事例がどうなっているのかを調べてみましょう。記憶に新しいところから2022年のサッカーワールドカップ・カタール大会の場合、日本代表戦はNHKや民放でも放映されましたが、全試合の放映権はABEMAが獲得しました。