
「なぜWBCが有料なんだ!」「野球の裾野が狭まる」大谷翔平の活躍を独占配信するNetflixに、怒りの声が上がっている。しかし、その矛先は本当に正しいだろうか?実はこの問題、日本のテレビ局が争奪戦に「敗れた」のではなく、そもそも「戦うことすらできなかった」という根深い事情がある。放映権を諦めたテレビ局の株価が、なぜか上昇した皮肉な事実。怒る前に知ってほしい、日本のテレビ業界が抱える構造的な“限界”の正体を解き明かす。(百年コンサルティングチーフエコノミスト 鈴木貴博)
日本最強のコンテンツ“大谷翔平”
に投資すらできない日本のテレビ
日本のメディアに激震が走りました。来年3月に開催されるワールド・ベースボール・クラッシック(WBC)のテレビ放送がなくなりそうなのです。地上波はもちろんBSも絶望的。大谷翔平を中心にした日本代表チームが活躍する試合を見ることができるのは唯一、独占配信権を獲得したアメリカの大手動画配信サービス「ネットフリックス」での動画配信だけです。
興味深いことに、25日の夜にこのニュースが報じられた直後、TBSとテレ朝の株価が反発したのです。TBSHDは26日午後に一時、前日比で約1.5%高まで株価が上昇しました。
前回同様に今回もTBSとテレ朝は共同で放映権の獲得に動いていたはずです。それがうまくいかなかったのに株価が上がった理由は、放送できなくなったことで巨額の放映権の支払いが必要なくなったからという皮肉な理由です。投資家は150億円ともいわれる放映権料の費用負担がなくなったことを好感したのです。
株主は短期的な利益を重視するのですが、今回のニュースはテレビ業界衰退の重要な転換点になりかねません。日本のテレビがこの先、どのように衰退するのか?そしてネットフリックスはどのように日本市場で成長できるのか?メカニズムを解説します。