
日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第109回(2025年8月28日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)
中園ミホをモデルにした生意気な少女・佳保
「とんでもない人を招いちゃったかもしれない」(嵩)
嵩(北村匠海)の詩集『愛する歌』が人気で、自宅にファンレターが届くようになった。小学4年生の中里佳保(永瀬ゆずな)とはファンレター(はがき)がきっかけで文通をすることに。
ある日、佳保は祖父・砂男(浅野和之)と一緒に遊びに来る。最初のはがきに「先生の所に遊びに行きたいです」と書いてあったので念願の仕事場訪問。
ところが、佳保はわがままで、いきなり「家があんまりボロだから」とか「サイダーないの?」とかやたらとずけずけと失礼なことばかり言う。はがきの文面では殊勝な感じだったのに。
このとんでもない佳保ちゃんには注目点がふたつある。ひとつは演じているのが、幼少期ののぶを演じた永瀬ゆずなであること。もうひとつは、脚本の中園ミホがモデルであることだ。
中園はインタビューでこう語っている。
「(佳保ちゃんは)私がモデルです(笑)。私が子どもの頃、やなせさんに手紙を書いて、お返事をもらい、その後、交流もあったことから思い浮かべたエピソードです。実在する方のモデルがいらっしゃる場合、あまり悪く書いちゃいけないですよね。すでに亡くなっているとしても、遺された家族の方に気を遣います。
でも私はすごく気の強いキャラクターを書くのが好きで、『あんぱん』でも思いっきり“クソガキ”を書きたいと思ったんですね。自分がモデルだったら構わないだろうと、思いっきり生意気な子にして言いたい放題言わせてみたらとても気持ちよかった(笑)。ただ、当時、やなせさんに会っていた私は、さすがにあそこまで失礼ではなかったですけれど」