そんな法務大臣の所信表明ですが、どの法務大臣でもほぼ同じやり取りをする部分があります。それが死刑に関する質疑です。驚くことに、どの法務大臣であってもほぼ同種の問答が繰り返されていることに気づくでしょう。例えば、記者による「死刑制度について、大臣のお考えをお聞かせください」という質問に対し、2020年に上川陽子法務大臣(当時)からなされた回答をご紹介します。
死刑制度につきましては、我が国の刑事司法制度の根幹に関わる重要な問題であると考えております。国民の皆様、世論におきましても、こうした制度についての考え方については、様々な考え方があるということでございまして、こうした世論に十分に配慮しながら、社会における正義の実現等、様々な観点から慎重に検討すべき問題であると考えております。
国民世論の多数の皆様が極めて悪質、また、凶悪な犯罪につきましては死刑もやむを得ないと考えておりまして、多数の者に対しての殺人や強盗殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況等に鑑みますと、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しましては、死刑を科することもやむを得ないのであり、死刑を廃止することにつきましては、現在のところ、適切ではないのではないかと考えております。
国民世論の多数の皆様が極めて悪質、また、凶悪な犯罪につきましては死刑もやむを得ないと考えておりまして、多数の者に対しての殺人や強盗殺人等の凶悪犯罪がいまだ後を絶たない状況等に鑑みますと、その罪責が著しく重大な凶悪犯罪を犯した者に対しましては、死刑を科することもやむを得ないのであり、死刑を廃止することにつきましては、現在のところ、適切ではないのではないかと考えております。
死刑制度の行方を
国民に丸投げすべきではない
ここから読み取れるのは、世論の多くが死刑に賛成であって、凶悪犯罪については死刑を科すこともやむを得ないので、現在のところは考えることができない。つまり時期尚早であるという部分です。これらは伝統的な死刑賛成派の意見の中にもありました。このように現在の日本では、国民の多くが死刑に賛成なので、死刑についての議論は今行いませんと法務大臣をはじめとして政治家たちも発言しているというわけです。
おそらく廃止派の意見としては、そもそも、死刑を廃止した国のほとんどが、世論は死刑を支持していても廃止にし、特にフランスでは政治主導で廃止にしていたり、イギリスでは間違った執行があったことが明るみとなり、国民の支持が死刑賛成多数であるにもかかわらず、廃止に踏み切っていることなどを論拠に反論をすることになるでしょう。そして、仮に死刑によって人権侵害が生じていたり、残虐な刑罰として憲法に反するのであれば、仮に世論が支持をしていたとしても政治主導で廃止すべきものだと考えるでしょう。