
「日本人の8割が死刑に賛成している」と、法務省は決まって発表する。しかし、その調査には、設問の立て方に工夫が施されている。問いの内容や方法によって、回答は大きく変わるのだ。聞き方ひとつで「8割賛成」という結果が導き出されるこの仕組みに目を向けると、死刑制度の見え方も、きっと変わってくる。※本稿は、丸山泰弘『死刑について私たちが知っておくべきこと』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。
人が変われど答えは同じ
法務大臣の先送り的答弁
日本人は世論調査で8割を超える人が死刑制度に賛成をしていて、死刑を望んでいる国民であるという前提で語られています。しかし、本当にそうなのでしょうか。また、賛成だとしても、何がなんでも死刑はやり続けるという「賛成」と、いずれは廃止にすることもあり得るが、今は廃止にすることが困難ではないかと悩みながら「賛成」という人もいるかもしれません。
法務大臣の所信表明や初登庁後の質疑をご覧になったことがあるでしょうか。その筋の人(例えば司法担当の記者など)でなければ全部を拝聴したことはないという人が大半でしょう。恥ずかしながら、かくいう筆者自身も法務大臣の所信表明を一言一句逃さず聴いたことはありません。司法担当の専門家であっても、政権が変われば法務大臣が変わることもあるし、誰がどの所信表明をしたのかまでは把握できないという方も多いかと思います。