トランプ氏が独断で壊した“許しがたい”数々
8月16日、アラスカ州のホテルにあったプリンターから、「米露首脳会談の文書が見つかった」と報じられた。ホワイトハウスは、今回のケースは機密情報の漏洩(ろうえい)には当たらないとの見解だが、前代未聞の事態との指摘は多い。明らかに、米国政権の情報管理能力は低下している。
米国政治の専門家の間では、「トランプ政権はカオスだ」との評もある。1期目では当初、トランプ氏は経済、外交、安全保障の専門家を主要ポストに配置した。が、2期目の政権内で、本当の意味での専門家と呼べる人材はほとんど見当たらない。
専門家がいないということは、トランプ氏に専門知識を持って進言できる人がいないということだ。歯止めがないのだから、どうしてもトランプ氏の独断専行は顕著になる。
トランプ氏は行政組織の閉鎖や人員の削減を進めている。一例として対外援助を管轄するUSAID(米国際開発局)の職員を大幅に削減した後、USAIDそのものも閉鎖した。これは米国を基軸国家とする世界にとって、重大な損失だ。
1961年、東西冷戦中に当時大統領だったジョン・F・ケネディ氏がUSAIDを設立した。その狙いは、米国自らが発展途上国の産業育成や公衆衛生を支援し、自由資本主義体制の価値観を養成することだった。USAIDは、米国の力に頼らない、いわゆるソフトパワーを体現した政府組織の一つだった。トランプ氏は、それを独断で解体してしまったのだ。
経済統計の制度運営にも、同様のことがいえる。7月の雇用統計発表時、トランプ氏は労働統計局長を解任した。これまでにも、過去のデータの修正幅が大きいことは問題視されていた。その原因の一つに、データを収集する人手が不足し、必要十分なサンプル数をカバーできなかったことがあるといわれている。
統計制度の向上には、担当官庁に必要な予算を配分し、データ収集体制を拡充する必要があった。しかし、トランプ氏は独断でトップを解任し、そのポジションに自身の考えに近い研究者を任命した。そうした恣意(しい)的な措置は、経済分析、政策立案に欠かせない統計データの信用性低下につながる。