【解説】菊池寛に学ぶ、驚異のプロジェクトマネジメント術
前ページで触れた小説の執筆法は、単なる「効率化」という言葉だけでは片付けられません。これはまさに、現代のビジネスにおけるプロジェクトマネジメントやコンテンツマーケティングの先駆けとも言える革新的なフレームワークともいえるでしょう。
小説の制作というプロジェクトを「情報収集(インプット)」「プロット作成」「執筆(アウトプット)」という工程に分解。そして、作家の強みが発揮される「執筆」というコア業務にリソースを集中させるため、周辺業務である「情報収集」を専門スキルを持つ人材に委託したわけです。
これは、現代企業がノンコア業務をアウトソーシングし、生産性を最大化する手法と何ら変わりません。
情報収集を制する者が、ビジネスを制す
さらに注目すべきは、その情報収集の対象です。海外の最新小説という一次情報に近いトレンドの源泉にアクセスし、それを日本市場向けにローカライズしてヒット作を生み出しました。
これは、海外の最新技術やビジネスモデルをいち早くキャッチし、自社のサービス開発に応用する現代のビジネス戦略そのもの。常にアンテナを高く張り、有益な情報を効率的に収集・活用する仕組みを構築することが、いかに重要であるかを教えてくれます。
逆境を乗り越えるヒントは『真珠夫人』にあり
一方、『真珠夫人』の主人公・瑠璃子の生き様もまた、ビジネスパーソンに多くの示唆を与えてくれます。彼女は、理不尽な状況にただ嘆くのではなく、「復讐」という明確な目的を設定し、その達成のために知略の限りを尽くします。
そのしたたかで強靭な精神力と、目的達成への執念は、困難なプロジェクトや厳しい交渉といった「逆境」に直面した際、私たちを奮い立たせてくれるでしょう。
菊池寛の仕事術と、彼が生み出した物語。その両方から、明日からの仕事に活かせるヒントを見つけてみてはいかがでしょうか。
※本稿は、『ビジネスエリートのための 教養としての文豪』(ダイヤモンド社)より一部を抜粋・編集したものです。