無愛想で不機嫌な人に
縁や運は寄ってこない

 前述の「編集者(が/を)つくった本」において並木さんは、こうも綴っています。

「私の手がけてきた(中公)新書は歴史関係が多い。しかも主として第一人者による概説書だ。楠木さんとの仕事には、未開拓の分野に挑戦したいという思いもあった。ともに手探りで本づくりを進めた『定年後』は、望外のヒット作という結果も相まって、編集者という仕事の醍醐味を味わう得難い経験となった」

 もちろん私にとっても、並木さんとの出会いがなければ、『定年後』は実現できなかった企画であり、ご縁に感謝するばかり。並木さんが私の「顔」を新聞紙上で見つけてくれなければ、この本も世に出ることはなかったはずです。

 常日頃から私は、自分が“いい顔”だと考える人と積極的に付き合うことを勧めています。なぜなら、顔つきにはその人の生き方や考え方が必ず表れるからです。逆に言えば、顔つきを好きになることができなければ、その人との相性も良くないことが多いと考えています。
 
 そうであれば、逆にビジネスパーソンはすべからく「いい顔」で過ごせるように意識するべきではないかと思います。朝夕の満員電車の中で見かける会社員の皆さんは、不愛想で不機嫌そうな表情をしている人も少なくありません。これでは縁や運は寄って来てくれません。

 それに対して、本当にやりたいことがある、果たすべき役割に気付いている、という人は、柔和な表情をしています。これは私のこれまでの経験上、間違いのないことです。

 ぜひ、普段から自身の表情をチェックしてみてください。そして、不機嫌そうな顔をしている自分に気付いたなら、「いい顔」でいられるよう鏡の前にも立ちましょう。最大公約数の「いい顔」は笑顔です。

 そういう気分にならないというときも形から入って、「いい顔」を作ってみる。それが良縁を呼び込むファーストステップになるかもしれません。

(構成/フリーライター 友清 哲)