運動する高齢夫婦写真はイメージです Photo:PIXTA

人生100年時代が到来したと言われるが、元気に生活できる「健康寿命」は男女とも70代。80代以上の高齢者の多くが、寝たきりや要介護になるという。どうすれば80歳の壁を越えて健康的に暮らすことができるのか。本稿は、和田秀樹『80歳の壁[実践篇]』(幻冬舎)の一部を抜粋・編集したものです。

「家族と同居」より「一人暮らし」が長生き
体を動かす5つのメリット

 一般に、「一人暮らし」の人のほうが、「家族と同居」している人よりも、健康です。認知症になるリスクも低めです。

 その理由は、体をよく動かすからです。一人暮らしだと、自分で買い物し、ご飯を用意し、掃除・洗濯も自分でしなければなりません。また、家にいても話し相手がいないので、外に出かける機会が増えます。それも、体を動かすことにつながります。要するに、一人暮らしのほうが長生きなのは、「体をよく動かす」からなのです。

 ここで、体を動かすことの高齢者にとってのメリットをまとめておきましょう。

1 「免疫力を高める」効果──体を動かして筋肉を使うと、体温が上がり、血流がよくなります。すると、その血流に乗って、免疫細胞の働きがよくなります。

2 「認知症を予防する」効果──体を動かさないと、徐々に筋肉が衰え、歩くスピードが遅くなったり、歩幅が狭くなったりします。それらのことは、認知機能の低下と密接な関係があると報告されています。

3 「骨粗鬆症を予防する」効果──骨を丈夫にするには、骨に多少の負荷をかけて、刺激を与えることが必要です。「体を動かす」ことは、その最も効果的な手段です。

4 「転倒を予防する」効果──さらに、体を動かしていると、筋肉を維持でき、「転倒」を予防できます。

5 「睡眠の質を向上させる」効果──昼間、よく動いていると、夜、よく眠れます。すると、疲れがとれ、またさまざまな「生活習慣病の予防」につながります。

高齢でも心肺機能は衰えない
問題は筋肉をどう維持するか

 年をとっても、運動不足になっても、「心肺機能」は、さほど落ちません。

 まず、心臓をめぐっては、「心予備力」という概念があります。いざというとき、安静時の何倍まで心臓を動かせるか、という能力のことです。これが、25歳のときには、安静時の4.6倍あるのですが、70歳では3.3倍に下がります。というように、若い頃に比べると下がりはするものの、安静時の3倍以上も働かせることができるので、問題はありません。

 肺活量も、さほど落ちません。70歳になると、25歳時点よりも、平均で17%減少しますが、肺活量は安静時に必要な呼吸量の6~8倍もあるので、17%程度減少しても、問題はないのです。走ることもできれば、運動する能力も残っています。

 このように、年をとっても、「心肺機能」は思うほどには衰えないのです。