大工以上に絶滅危惧種になりつつある左官職人についても支援しています。弊社では茶室の設計・施工もしており、土壁やしっくい仕上げなど伝統的な技術が欠かせないからです。私は個人的にものつくり大学の修士課程で左官の研究をしており、東京大学の博士課程に進んで研究を継続することを目指しています。

――いい材料については、どんなことをされているのですか?
増井 シックハウス症候群の元凶の一つは、多量の防虫剤を使った外国産の米松集成材です。そこで弊社は、国産の木材を確保し、健康的で長持ちする住宅を提供しています。栃木県・鹿沼の山から直接木材を買い付け、日光の製材所で加工するルートを構築し、サクラやクリなどの国産広葉樹も原木で購入しています。首都圏の工務店でここまでしている会社は珍しいと思います。
――質の高い材料を使う分、コストは上がりそうですね。
増井 「1000万円でカフェを建てたい」といった低予算のお客さまの場合は「セルフビルド」を取り入れることを提案しています。タイル貼りや壁面の塗装など一部の工程をお客さまご自身でしていただくのです。「家づくりをもっと自由に」を掲げているので、オリジナリティーある建物を建てたいお客さまにはあの手この手でご要望にお応えしています。
――だから他社で断られたお客さまが相談に訪れるわけですね。
増井 他で断られた方は「土地に問題がある」などの事情で、住宅ローンも断られていることも少なくありません。そんなときには川口信用金庫さんにご相談しています。メガバンクでは相手にしてもらえない特殊な事情を抱えたお客さまでも、人柄や事業内容をしっかりと見て判断してくれるのが信用金庫の大きな長所。お客さまの夢を実現するためのパートナーとして、非常に心強い存在です。
――今後の抱負をお聞かせください。
増井 静岡県・伊豆の松崎町にあるなまこ壁の蔵を購入し、5年計画で再生プロジェクトを進めています。伝統建築の保存・活用と同時に、社員教育の場としても活用する予定です。
私は弊社の開業時に、早稲田大学名誉教授の石山修武先生が実施していた、職人と建築家、アーティストが共に学び合うワークショップに大きな学びを得ました。「これこそ技能者教育の最後の答えだ」と考え、同様の環境を復活させ、ゆくゆくは社内のみならず、社外にも広げていきたい。そうすることで建築業界全体の底上げに貢献していきたいと思っています。
(取材・文/杉山直隆、「しんきん経営情報」2025年9月号掲載、協力/川口信用金庫)
事業内容:建設業
従業員数:34人
売上高:7億3500万円(2024年3月期)
所在地:埼玉県川口市中青木3‐2‐5
電話:048‐254‐8021
URL:masuii.co.jp