未来の出来事がいつ起こるかを予言するには、占い師と同等の洞察力が必要となる。対照的に、必ず起きる出来事を待つのに必要なのは、たっぷりの量の忍耐力だけだ。買いの好機を与えてくれる黒い白鳥は、いつなんどき現れるかわからず、あらゆる市場の個別企業に舞い降りる可能性があり、一度きりの出来事なのに1、2年のあいだ当該企業の株価を叩きのめす。そう、ウォーレンはじっと待ちつづけている。次の黒い白鳥が泳いできてショーを舞台ごと沈み込ませてしまうのを!

株価の大暴落で
優良企業が掘り出し物に

我々は信念をもって現金を保有している
――現金がなければ翌日のプレイに参加できない状況は、
過去の歴史の中で何度か起こってきたし、
未来の歴史の中でも何度か起こるだろう

 誰も持っていないときに現金を持っている状況は、ウォーレンの投資戦略の鍵となる要素と言える。きっかけは偶然だった。1960年代末から70年代初頭にかけての荒れ狂うような上昇相場で、ウォーレンは買うべき割安株をまったく見つけられなくなり、投資戦略を変更する代わりに、投資組合を清算してゲームから撤退した。その後、1973年から74年にかけて株価の大暴落が起きると、突如として目の前には、お気に入りの企業すべてが掘り出し物になるという光景が広がっており、現金をたっぷり持ったウォーレンは常軌を逸したように株を買いまくった。

 一方、独自の投資組合を運営していたチャーリーは、ゲームにとどまり、1973年から74年にかけての大暴落で、投資家たちの資金の半分を失った。のちのち損失分は取り戻せたものの、彼にとってこの一件はトラウマとして残りつづけた。大暴落が起きたとき、チャーリーは値下がりした大量の株券の上に座っているしかなかった。他方、ウォーレンは大量の札束の上に座っており、優良企業の株をお買い得価格で買うことができた。これが当時のふたりの違いだ。