株価大暴落のおかげで
鉄道会社を丸ごと買収

 ウォーレン曰く、この出来事は彼の職業の方向性を根底から覆した。山のような現金でポケットを膨らませていたら、1973~74年の株価大暴落のさなかに、目から鱗が落ちるような体験をしたわけだ。“下げ相場に備えて現金をしこたま抱えておく”戦略は、2008年から09年にかけての株式市場崩壊で、最も劇的な活躍ぶりを披露した。

暴落は10年周期でやってくる…ウォーレン・バフェットが、株価暴落に備えて「常に用意しているもの」とは?『新・バフェットの教訓 時代の激流を味方にする135の流儀』(メアリー・バフェット 著、デビッド・クラーク 著、峯村利哉 訳、徳間書店)

 リーマン・ショック時のウォーレンは〈バークシャー〉(編集部注/バークシャー・ハサウェイ:ウォーレン・バフェットが会長を務める、投資ファンド)を通じて、〈ゴールドマン・サックス〉に50億ドル、〈バンク・オブ・アメリカ〉に50億ドル、製菓会社の〈マース〉に65億ドル、〈ゼネラル・エレクトリック〉に30億ドル、〈ハーレーダビッドソン〉に3億ドルの投資を行ない、“最後の貸し手”の役割を演じてみせた。〈BNSF鉄道〉を260億ドルで丸ごと買収したのもこのときである。

 チャーリーはこの戦略をもう少し実務的な表現で説明する。「金持ちになる方法とは、良い取引がやって来るのに備えて、1000万ドルを当座預金口座に入れておくことだ」。そう、先述のとおり、〈バークシャー〉は2000億ドル以上の当座預金の上に座り、次の良い取引がやって来るのを待っているのである。