
会社のルールや制度が変わるたびに漏れる「聞いてないよ!」「昔はこうじゃなかった」。長く勤めてきた社員の声は、ただの懐古主義ではない。組織の成長がもたらす“摩擦”をどう受け止めればよいのかひも解く連載第20回。(人材研究所ディレクター 安藤 健、構成/ライター 奥田由意)
「もう求められていないのかな……」
組織の変化に戸惑う古参社員たち
「こんなに長く勤めてきたけれど、私はもう今の会社には求められていないのかなと思いました」
これは、ある企業で人事制度の変更を行った際に実施した面談で寄せられた、古参社員からの切実な声です。今年7月にも日産が約4000人規模の工場を閉鎖する見通しであるというニュースが話題になりましたが、このような大きな組織変化に直面したとき、長く務めてきた多くの従業員が冒頭のような感情を抱くのではないでしょうか。
近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)による業務プロセスの効率化、リエンジニアリング、中途採用の増加、組織拡大に伴う人事制度やルールの整備など、多くの企業で急激な変化が起きています。
こうした変化の中で、特に古くからその組織にいる社員の中には、強い違和感や居心地の悪さを感じている人も少なくありません。
リストラ勧奨でなくても、組織改変や新たな手法の導入などに対して「そんな話、聞いてないよ!」「お払い箱ということですか」という叫びは、会社で、さまざまな変化が起こるたびによく聞かれる反応です。
このような違和感を、単に古参社員の「老いの繰り言」として片付けてしまうのは適切ではありません。古参社員がこうした感情を抱くのは、組織の成長に伴う自然な現象だからです。