ホワイトすぎる職場が「全員共倒れ」で沈没するワケ写真はイメージです Photo:PIXTA

最近、部下を叱れない上司が増えている。強く言えばハラスメント、黙っていれば成長しない――職場でよく見かけるジレンマだ。上司は部下のミスをカバーし続けて疲弊し、若手は挑戦の機会を得られず伸び悩む。“ホワイトすぎる職場”は、表面上は平穏でも、実は「全員共倒れ」に向かって進んでいる。では、どうすれば健全にフィードバックできるのか。職場の誰もが知っておきたい実践のヒントを紹介する連載第21回。(人材研究所ディレクター 安藤 健、構成/ライター 奥田由意)

強い口調やストレートな表現は敬遠
部下を指導できない上司

 現代の企業組織で、静かに進行している深刻な問題があります。それは、コンプライアンスやハラスメントへの社会的意識が高まる中で、企業の現場では「上司が部下を指導しない」「現場に波風を立てない」ことが一般的になりつつあるということです。

 近年では、上司が部下に対して厳しい指導を避けるようになっています。人によって受け止め方が異なるため、少しでも強い口調やストレートな表現は敬遠されます。その結果、何が起きているのでしょうか。

 経営者にとって最も深刻なのは、人材が育たないことです。事業の成長を担う層が薄くなり、組織全体の成長が止まってしまいます。

 マネージャーにとっては、部下の行動や成果について言及しないため、部下の仕事能力が向上することはありません。部下の仕事のミスは常に上司がカバーし続けることになり、プレイングマネージャー化が加速し、忙しさが終わらない状況に陥ります。

 一方、若手社員にとっては、確かに周囲の人も優しく、穏やかな仕事環境ではありますが、挑戦や修羅場の経験がないため、成長実感を持てません。スキルアップにつながる機会も限られてしまいます。

 つまり、誰にも怒られない代わりに、誰も成長しないという状況が生まれているのです。これは「静かな共倒れ」と呼ぶべき現象であり、縮小均衡のマネジメントに他なりません。