リニア新幹線Photo:PIXTA

JR東海は10月29日、建設中のリニア中央新幹線品川~名古屋間の総工事費が約11兆円に及ぶ見通しであると発表した。着工時の想定は約5.5兆円で、2021年に約7兆円へ増額するとしていたが、ついに当初見込みの倍まで膨れ上がることになった。リニア計画は本当に実現するのだろうか。(鉄道ジャーナリスト 枝久保達也)

資材価格の高騰などで
総工事費が大きく増加

 2021年の増額は、「難工事への対応」「地震対策の充実」「発生土の活用先確保」の3点を挙げていたが、今回の増額分計3.9兆円のうち2.3兆円が物価、人件費の高騰によるものだ。2.3兆円の内訳は、鋼材やコンクリートなどの建設資材や各種設備を構成する銅やアルミなどの材料価格の上昇などによる1.3兆円に加え、今後の工事費上昇リスクに備えた1兆円となっている。

 一般財団法人建設物価調査会の建設資材物価指数(東京)によれば、2015年を100とした物価は、建設部門、土木部門とも2021年までは105程度で推移していたが、その後、急激に上昇し、2023年に130、2025年には140を超えている。

 また、路線の大部分を占める山岳トンネルの建設にあたっては、事前に実施した調査結果を踏まえて掘削計画を立てていたが、実際に掘削した区間では想定よりも脆い地山が出現しており、トンネル内側を鋼製アーチで補強したり、地中にロックボルトを埋め込んだりといった対策が必要になった。

 この他、高架橋や橋梁について用地取得後の追加調査をふまえた設計変更、品川駅や名古屋駅について地震対策や周辺インフラ構造物への影響を低減する対策の強化など、難工事対策で1.2兆円、シールドトンネルのガイドウェイ側壁などの仕様変更で4000億円を見込む。設計変更、仕様変更を重ねるたびにインフレの影響を強く受けている形だ。