あるシングルマザーの告白
手紙に書いてあった番号に電話してみると……

 手紙の冒頭で突然の送付を謝りつつ、真蔵の取引先でフリーランスのエンジニアをしている邦村寿々さん(くにむらすず・32歳)といい、幼い子どもを育てるシングルマザーである旨の自己紹介がありました。

 真蔵の仕事関係には全くと言って良いほどノータッチだったため、何事かと思い手紙を読み進めました。

「申し訳ありません。ご主人と関係を持ってしまいました。けれどそれは私の意思ではなく、仕事の契約を盾に強要されているのです。もう限界です。私の電話番号を記載いたします。一度相談をさせていただきたく存じます」

 衝撃的な告白に、沙百合さんは体が震えました。

 しかし文面を繰り返し読むうちに、それがただの浮気ではなく、支配と恐怖の関係であることを理解しました。

 沙百合さんは、気持ちの整理がつかず、すぐに電話する気にはなりませんでした。しかし名前や電話番号まで記載しての赤裸々な告白に、無視することはできないという思いから、3日後に電話しました。

 電話に出た寿々さんは、まずは関係を持ってしまったことを丁重にわびながら、事の顛末を話してくれました。

「川野さんは私のようなフリーランスのエンジニアの業務委託契約を管理する立場にあって、3カ月ごとに契約更新の面談があります。半年前の更新面談では私の働きを評価してくださり、給料のアップを提示してくださいました。手紙にも書いた通りシングルマザーで家族の支えが得られない私にとっては、願ったりかなったりの更新でした。

 いつも笑顔で温かく接してくださる川野さんには本当に感謝しているのですが、3カ月前の更新面談から状況が変わりました。エンジニアの待遇を良くしたいので、食事でもしながら率直な意見を聞きたいと誘われました。