《ロシア・ウクライナ和平交渉》プーチンとトランプが主導する「安全の保証」「領土の交換」その中身とは?【佐藤優】2025年8月18日、米ワシントンのホワイトハウス大統領執務室で会談したウクライナのゼレンスキー大統領(左)とトランプ米大統領 Photo:AFP=JIJI

ロシア・ウクライナ戦争を巡る動きが、慌ただしさを増しています。プーチン大統領とトランプ大統領の会談では、深いやりとりがなされたことは確か――。トランプ大統領が約束した「安全の保証」とは?(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)

米ロ会談では
かなりの擦り合わせができた

 ロシア・ウクライナ戦争を巡る動きが、慌ただしさを増しています。事態が動き始めたのは、8月15日にロシアのプーチン大統領が米アラスカ州アンカレジの米軍基地を訪れ、トランプ米大統領と会談したからです。

〈両首脳はその後に共同記者会見に臨み、「生産的な会議だった」などと評価したが、詳細は明らかにしておらず、停戦に向けた具体的な進展は示せなかった〉(8月16日「朝日新聞」デジタル版、以下同)

 この記事は〈停戦に向けた具体的な進展は示せなかった〉と書いていますが、筆者の評価は異なります。会談直後に行われた共同記者会見で、トランプ氏はこう述べています。

〈私たちは週に5千、6千、7千人、何千人もの人が殺されるのを止めるつもりですし、プーチン大統領も私と同じようにそれを望んでいます〉

 停戦に関する協議がなされなければ、このような発言が出てくるはずはありません。具体的な合意が表に出ていないとしても、かなり深いやりとりがなされたことは確かです。プーチン氏の長い発言に対して、トランプ氏が反対したり留保を付けたりした箇所が一つもなかった点からも、そのことは明らかです。停戦に向けて米ロ両国でかなりの擦り合わせができたとみるのが妥当です。

モスクワでの会談が実現すれば
国際政治のルールが変わる可能性

 ここでは朝日新聞の記事を引用して批判しましたが、ほかのメディアや、コメントを寄せている識者も似たり寄ったりです。日本の新聞記者と、国際政治学者やロシア専門家の取材力と分析力が弱くなっているので、トランプ・プーチン間でウクライナの停戦と和平に関する踏み込んだ意見交換がなされたことに気付かず、頓珍漢(とんちんかん)な評価がなされるのです。

 両大統領とも、今回の会談を成功と位置付けたことは間違いありません。共同記者会見での最後のやりとりからも、それが伝わります。

〈トランプ氏が発言の最後に、プーチン氏に「また近く話そう」と水を向けると、プーチン氏は英語で「次はモスクワで?」と応じ、トランプ氏は「オー、それは面白い」と反応した〉

 プーチン氏の「次はモスクワで?」という問い掛けに、トランプ氏が「オー、それは面白い」と受けたことが重要です。首都で行われる首脳会談は公式性が高まり、合意文書の発表が不可欠になります。首都での首脳会談で合意文書が出ないと、会談は失敗したと見なされるのが外交の常識です。次回の会談がモスクワで行われれば、国際政治のゲームのルールを変更するような合意文書ができるかもしれません。