
7月23日、米国のトランプ大統領は日本に課す「相互関税」の税率を15%にすると発表した。作家で元外交官の佐藤優氏が「単なる虚勢や脅しではなく、この方向性は決して変わらない」と語るトランプ大統領の腹の内とは――。(作家・元外務省主任分析官 佐藤 優、構成/石井謙一郎)
石破「なめられてたまるか」発言を
トランプ大統領が気にしなかった理由
米国のトランプ大統領は7月23日、日本に課す「相互関税」の税率を15%にすると発表しました。
一時は日本の貿易姿勢を批判して、「30%や35%の関税をかける」とも言い放ち、7月7日には8月1日から25%の税率にすると発表していましたが、その数字より大幅に引き下がった格好です。
そもそも、7月7日にトランプ氏が示した25%という数字に積算根拠はありません。トランプ氏が口にする数字は、同氏の心情を反映するものにすぎないからです。「ブラジルのトランプ」と呼ばれたボルソナーロ前大統領擁護とブラジル司法への不満が、当初10%と公表していたブラジルの税率を50%まで引き上げさせたことがその証左です。
石破首相は7月9日、千葉県船橋市での街頭演説で、トランプ政権との関税交渉について「国益を懸けた戦いだ。なめられてたまるか。たとえ同盟国であっても正々堂々言わなければならない。守るべきものは守る」と語りました。
自民党の小野寺五典政調会長も、佐賀県神埼市での集会で、「トランプ、ひどい人です。あまりにひどい仕打ちだ」と述べました。
「なめられてたまるか」「ひどい人です」という発言は、トランプ氏を刺激して関税交渉に不利に働くのではないか、失言だったのではないかとも指摘されましたが、トランプ氏に影響を与えませんでした。日本は選挙中で、選挙のときはこれくらいのことを言ってもいいという「常識」をトランプ氏がわきまえているからです。