後回しになりがちな夏休みの自由研究。まだ終わっていないお子さんもいるのでは?
でも、たった半日あれば、面白い自由研究はできる。特別な準備は不要、今日からできる自由研究のやり方があるのだ。
その方法を紹介しているのが、『デイリーポータルZ式 自由研究 ENJOY BOOK』(アリス館)
身近なテーマを深掘りする記事を23年間掲載しつづけてきたウェブサイト「デイリーポータルZ」のノウハウを、ライターの井上マサキ氏が子ども向けにわかりやすくまとめあげた。
今回話を聞いたのは「今からでも自由研究は間に合う!」と語る、デイリーポータルZのウェブマスター・林雄司氏。
聞き手は『みのまわりの謎大全』(ダイヤモンド社)著者で、デイリーポータルZの愛読者でもあるネルノダイスキ氏だ。(構成/末松由・金井弓子)

【8月31日でも大丈夫】子どもが絶対に自由研究を終わらせられる「すごい本」とは?林雄司(右):1971年東京生まれ。デイリーポータルZウェブマスター。主にインターネットと世田谷区で活動。編著書は『死ぬかと思った』(アスペクト)など。
ネルノダイスキ(左):漫画家・イラストレーター。アーティストとして絵画や立体作品の展示を行うかたわら、2013年よりネルノダイスキ名義で漫画を描きはじめる。2015年、同人誌『エソラゴト』が第19回文化庁メディア芸術祭マンガ部門で新人賞を受賞。2017年、同人誌『であいがしら』が第20回文化庁メディア芸術祭マンガ部門で審査委員会推薦作品に選出された。著書に『いえめぐり』(KADOKAWA)、『ひょうひょう』『ひょんなこと』(ともにアタシ社)がある。

残り時間が少ないほど、自由研究は面白くなる

ネルノダイスキ(以下、ネルノ):夏休み終盤、なんとか宿題が終わっても、自由研究が残っちゃってる子っていると思うんですよ。

『デイリーポータルZ式 自由研究 ENJOY BOOK』は、夏休み残り1日で読んでも、自由研究を完成させられますか?

林雄司(以下、林):間に合うと思いますよ。むしろ、余裕がないからこそ、面白いものができることもあります。

デイリーポータルZの記事も、たいていみんな掲載の前の日に書いています。もし掲載1週間前に記事ができていたら、僕は怒りますよ。そんな、前もって計画的にやるなって。

ネルノ:えっ、怒るんですか(笑)?

林:ハプニングとかパッションでやるんだから、仕事みたいに計画的にしないでくださいって結構本気で言いますね。あと前倒しで入稿すると載せちゃったりしますね。「載せたれ」と思って(笑)。そういう自転車操業でやってるから、自由研究、締め切りギリギリなんて全然余裕ですよ。

『自由研究 ENJOY BOOK』でも紹介している「してみよう! 拾い食い」という記事は、タイトルどおり(衛生に配慮しつつ)拾い食いをしてみる企画で、これなんかは1日もかからないですね。かける時間と面白さは比例するわけじゃないんです。

無理して「好きなもの」をテーマにしなくてもいい

ネルノ:大事なのは「何を調べるか」のテーマを見つけるってことですかね?『自由研究 ENJOY BOOK』には、テーマを考えるために使える「自由研究レシピ」というチャート式の表が用意されています。

【8月31日でも大丈夫】子どもが絶対に自由研究を終わらせられる「すごい本」とは?『デイリーポータルZ式 自由研究 ENJOY BOOK』本文より イラスト:クリハラタカシ
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林:そうそう、テーマを探すのって、慣れないとちょっと大変なので。

大人はよく「好きなものをテーマにしたら」とアドバイスするんですけど、「好き」って難しいですよね。いざ「好きなものってなんだろう」と考えると、パッと浮かばない人も多いと思います。

イラストを担当したクリハラタカシさんからも指摘があって、本書では「好きなもの」が見つからない人のために、「苦手なこと」とか「気になるもの」をテーマにするという案も紹介しています。

ネルノ:大事なのは「心が引っかかる」ってことですもんね。

林:考えるとっかかりとして「嫌なもの」を使うこともあります。

デイリーポータルZのライターさんも「ネタがない」って悩んじゃうことがあるんですけど、そういうとき、あえて嫌なネタをぶつけてみるんです。「絵の具で綺麗な色水を作るだけの企画」とか……。

ネルノ:たしかに、あんまり面白くないかもしれません(笑)。

林:そう、嫌ですよね。でも、それきっかけで触発されて「色水は嫌だけど、醤油の濃さでやります」と別のアイデアが出たりするんです。何かをぶつけると、それで思いつく。

ネルノ:「好き」にとらわれすぎないことって、今の時代に必要な視点かもしれません。

僕は大学で学生と話す機会があるんですが、学生って「好きなもの」をあんまり言いたがらないんです。どうも、「好きなもの」=「詳しくなくちゃいけない」っていう恐怖があるらしくて。

林:それは今、すごいありますね。下手の横好きができない感じがします。

ネルノ:「このバンド好きって言ったなら、全部曲知ってなきゃいけない」みたいな呪いが確実にありますよね。

完成度にこだわるより、やり遂げることが重要

林:だから、『自由研究 ENJOY BOOK』の「おわりに」には「適当でいいですよ」って書いたんです。何かを書くとき「すごいものを作ってびっくりさせてやれ」って意気込んでしまいがちなんですが、そうすると書けなくなっちゃうんですよ。

ネルノ:「適当でいいですよ」っていい言葉ですね。僕も学生に「適当でいいから、とりあえず出しちゃえ」「5割でもいいから」と言うことがあるので、共感できます。何かを世に出すって勇気がいるから、そう言っても踏み切れない人が多いんですけど、そこで勇気が出せると企画が小さくまとまらない。

林:完全なことや、詳しいことって、じつは面白さとは全然関係がないんですよね。

とはいえ不完全なものを出すのが怖い気持ちもわかります。そういう人は、研究の内容に制限をつけると楽です。「1日でどこまでできるか」とか、あらかじめ行動する期間を限定しちゃう。

ネルノ:たしかに。嫌でも終わっちゃう。

制約が面白さにつながることもある

林:そう。何かを食べ比べる企画の場合、何十種類も集めようとすると終わらないから、駅の近所で売ってるものだけでやるとか、コンビニ限定にする。バリエーションが無限にあるものは、あえて制限をつけると、まとまりが出て面白くなります。

「ロボットを作る」なんて企画は難しそうだけど、「果たして俺は1日でロボットが作れるのか」っていうテーマにしとけば絶対1日で終わります。

ネルノ:それは…失敗しても面白そう。

林:「1日ではできないことがわかりました。もう1日あるとできると思います」みたいな結論でもいいんですよ。ずるいけど、デイリーポータルZでよくやる手です。

自由研究も「8月31日の1日間でできるのか」「◯時間でできるか」って、だんだん制限をつけていけば絶対に終わります。

ネルノ:1日あれば面白いものができるって、すごくいい。夏休み最後の憂鬱が吹っ飛ぶ気がします。

※本稿は『デイリーポータルZ式 自由研究 ENJOY BOOK』(アリス館)に関する書き下ろし対談記事です。