「俺様のあんぱんを食ってでかくなったんだ」阿部サダヲの“じいさん”ヤムさん、再登場した朝の存在感【あんぱん第111回】“ヤムおじさん”こと屋村草吉役の阿部サダヲさん 写真提供:NHK

日本人の朝のはじまりに寄り添ってきた朝ドラこと連続テレビ小説。その歴史は1961年から64年間にも及びます。毎日、15分、泣いたり笑ったり憤ったり、ドラマの登場人物のエネルギーが朝ご飯のようになる。そんな朝ドラを毎週月曜から金曜までチェックし、当日の感想や情報をお届けします。朝ドラに関する著書を2冊上梓し、レビューを10年続けてきた著者による「見なくてもわかる、読んだらもっとドラマが見たくなる」そんな連載です。本日は、第111回(2025年9月1日放送)の「あんぱん」レビューです。(ライター 木俣 冬)

ヤムおじさん、再登場。「じいさん」と呼ばれていた

 嵩(北村匠海)が突貫で書いたラジオドラマ『やさしいライオン』を聞いていたのは、育ての親・千代子(戸田菜穂)と実母・登美子(松嶋菜々子)だけではなかった。

 屋村(阿部サダヲ)もどこかのパン工場でラジオを聞いていた。「ラジオのドラマなんか書くやつになったのか」と驚いていると、職場のバイトが、やないたかしはテレビに出ているとか『手のひらを太陽に』の作詞家だとか言う。

 そう、ラジオドラマで久しぶりに嵩の状況を知るよりも、超有名な『手のひらを太陽に』の作詞をしたのかとすでに知っていてもおかしくないのだが、そこは屋村。世間の流行に興味がなく、勝手気ままに生きているのだろう。

 バイトたちに「俺様のあんぱんを食ってでかくなったんだ」と自慢するも、誰も本気にしない。きっと、この職場でも調子が良くて腕もいい、謎の人と思われているのだろう。

 バイトたちに「じいさん」と呼ばれている屋村。もう「じいさん」と言われるほど年をとったのだ。そりゃそうだ。嵩たちだって40代くらいだから。

 こうやって屋村が出てきたということは、今後、嵩たちと再会もあるに違いない。すっかり売れっ子作家になった嵩に屋村はどんな態度をとるだろうか。

 ラジオドラマの放送が終わると、嵩は、母がどう思ったのかなと気に病んでいた。

 ライオンと育ての親との愛情物語。おそらく、育ての親・千代子にとってはこの物語は染みたことだろう。だが、実母の登美子はどうか。険しい顔で聞いていたようでもある。

 のぶ(今田美桜)は登美子が気分を害したのではないかと心配する。そこで立ち上がったのは――