
羽多子、奮闘。「あんたはムクムクやのうでムカムカや!」
羽多子(江口のりこ)である。
「わてが人肌脱ぎまひょ」とアイデアを語る。お茶をやってみたいから嵩のマンションの茶室で教えてほしいと頼むというのだ。
マンションに引っ越してから1回も登美子を呼んでいなかったわけだ。登美子は喧嘩しても気まぐれに顔を出してきたから、この時点では、登美子と嵩はうまくいっていない状況のようだ。引っ越しの連絡をしても登美子のことだから無視していたのかもしれない。
のぶは、老いた登美子もこのマンションに呼んで一緒に暮らそうと考えていた。実母と義母がひとつ屋根の下で暮らしたら、何かと気詰まりではないだろうか。
その心配は的中した。お茶のあと、『やさしいライオン』の話題を出した羽多子。そこからみるみる険悪なムードになる。
のぶはこの機会に、嵩が登美子を慕っていると言うが、案の定、登美子は嵩の作品を悪く言う。相変わらず登美子は嵩を低評価。そこへ嵩が帰って来た。
登美子「嵩、あなたもっとずるくなりなさい」
嵩「いきなり なんだよ」
いつも唐突で意地悪な登美子に我慢ならず、羽多子は、嵩に「許してくれ」と頭を下げるべきだと主張する。登美子は自分の都合で嵩を振り回してきたのだとはっきり指摘した。
「あんたはムクムクやのうてムカムカや!」
江口のりこは、肌はつるつるだが、老いて背中が丸まっている姿勢を見事に体現しているが、老いても精神は毅然としていて、堂々と登美子に闘いを挑む。年をとってもなお凛としている老婆になっていた。
にらみあう羽多子と登美子。のぶが思わず「それまで!」と割って入る。
すると、ふたりは笑い合う。ツワモノである。「それまで」と止めたのぶの毅然とした顔と声もさすが。
登美子はのぶの同居の申し出を受けず、去っていく。
「たまるかあ。あの人は一筋縄ではいかんねえ」と羽多子。
ここで思い出すのは、中園ミホのインタビューだ。
「オンエアを見ているうちに、さすがにこれはお茶の間の皆さんに不評を買うのではないかと心配になってきて、途中から少しいい母親に路線変更しようとしたんです。
そうしたら、松嶋菜々子さんが『私は、登美子が死ぬまでこのままでいきたい』と監督を通じて言ってくださって。思いきりそっちに振り切れるようになりました。登美子くらい振り切れていると書いていて気持ちよかったです。
登美子が好きという女性視聴者の声をよく聞くので、書いてよかったと安堵しています」
松嶋菜々子の覚悟がすばらしい。おかげで登美子は面白いキャラになったのだと思う。