「頭がいい子に育てたい」。そう願う親は多いことだろう。では、「頭がいい」とはどういったことだろうか。東大進学を目指し、高校に通わずに独学で偏差値45から東大合格を果たした神田直樹氏は、「頭がいい人の3つのポイントは理解力、熟考力、伝達力であり、つまり『国語力』であると言える」と語る。国語力を総合的に磨けば、それ以外のすべての科目の理解度も深まり、成績も上がるのだという。自身の経験を活かし、現在は国語特化のオンライン個別指導「ヨミサマ。」を経営する神田氏は、「国語力向上のベースは語彙力」と指摘する。本記事では、神田氏の著書『成績アップは「国語」で決まる! 偏差値45からの東大合格「完全独学★勉強法」』の内容をもとに、神田氏ならではの語彙力アップ術を紹介する。(文/神代裕子、ダイヤモンド社書籍オンライン編集部)

成績アップは「国語」で決まる!Photo: Adobe Stock

「語彙力=難読語を知っていること」ではない

「語彙力」と聞くと、どんなことを思い浮かべるだろうか?

 難読語の意味や読み方を知っていることだと思う人も多いと思う。

 それも一種の語彙力ではある。しかし、神田氏は「入試で求められる語彙力とは、知っている単語量の多さに左右されるのではなく、リアルに“いま使われている言葉”を多面的に理解する力なのです」と語る。

 例えば、「呪い」という言葉から連想するのは、恨みのある人物に災いをもたらすために、古木にくくりつけた藁人形に五寸釘を打ち込むようなシーンではないだろうか。

 しかし、語彙力があると次のような使い方ができると神田氏は説明する。

「自分は男性だと思っている花子にとって、子どもの頃から『かわいらしい』と言われるのは“呪い”のようなものだった」という文章で使われる「呪い」という言葉は、藁人形とも五寸釘とも関わりがありません。
それを「自分らしくありたいという自我の形成にとってのくさびのようなもの」といった解釈ができるのが、入試で本当に求められている語彙力の高さなのです。(P.55)

 確かに、こうした使い方は辞書に載っている言葉をただたくさん知っていてもできるわけではない。小説などをより多く読んでいる人の方が身についている力とも言えるだろう。

読書量を増やすことでの語彙力アップは難しい

 しかし、神田氏は「本をたくさん読みなさい」とは言わない。

 なぜなら「語彙力を高めるために本をたくさん読むには、2つの壁が立ちはだかっている」と思っているからだ。

 それは、「①本を読む精神的・心理的負担」と「②国語的な負荷が軽すぎる心配」だ。

 ①については、本購入のための金銭的な負担などではなく、本を読み通すことに対する子どもたちの精神的・心理的な負担であるという。

 確かに、生来の読書好きでない限り「本を読むのは苦手」という人は多い。しかも、好きな本ではなく、語彙力を高めるための本を読むように言われると、かなりハードルが高いだろう。

 ②に関しては、子どもたちがスイスイ読めるような本では、語彙力を伸ばす本にはならないということだ。

 なぜなら、本当に国語力を伸ばす本というのは、いまのままではわからない部分が多少あるものが適切だからだ。

 その典型として神田氏が挙げるのが「多くの児童向け小説」だ。児童文学は子ども向けに書かれているため、使われている語彙もその使い方も、論理展開も単純すぎることが多いのがデメリットなのだそうだ。

 では、どういった本がいいのか。神田氏は、「『短くて論理が複雑な本』を読むこと」を推奨している。

短ければ短いほど、本を読むことに対する心理的負担は下がります。そのため、適度に難しい文章はまたとない“頭の体操”になってくれます。多少難しい文章でも、短ければ子どもは抵抗なく読めるでしょう。(P.60)

 ここからは、神田氏がおすすめする本を具体的に紹介していこう。

語彙力アップに最適な四コマ漫画

 なんと、神田氏が「短くて論理が複雑な本」として国語力を鍛えるのに最善だと思っているものの一つは、四コマ漫画だという。

四コマ漫画は楽しく読めて、短く、適度に複雑で、“いま生きている言葉”を学べるもってこいのテキストなのです。(中略)
四コマ漫画が短いという点は、誰もが納得するでしょう。1作品につき20秒もあれば難なく読めます。
それでいてコマごとに展開が毎回変わり、論理的な複雑性も高いという特徴があります。たった四コマで、面白くしないといけないからです。(P.68-69)

 言われてみれば、四コマ漫画は4つしか展開がないからこそ、行間を読む力やこのストーリーのどこに面白さがあるのかを察する力が必要だ。

 神田氏は、「もし子どもが四コマ漫画を読んで笑っていたら、親御さんは『この漫画のどこが面白いと思ったの?』と訊ねてみてください」と提案する。

 どこが面白かったかを人に説明することで、伝達力も育つからだ。

四コマ漫画は、基本的に大人向けなので、適度な国語的負担があるうえに、20秒もあれば読めて、60秒もあればその面白さを伝えられます。
これを日々繰り返しているうちに、国語力はトータルに高まるのです。(P.71)

 てっきり「新聞を読め!」と言われると思ったが、新聞本紙よりも四コマ漫画が良いとは。なかなか面白いアプローチだ。

「54文字の物語」が国語力を伸ばす理由

 四コマ漫画以外に、短い文章で国語力を鍛えられる本として神田氏がすすめるのは『54文字の物語』(PHP研究所)だ。

 これは、9マス×6行の正方形の原稿用紙に書かれた計54文字の超ショートストーリーを収めたシリーズだ。SNSでも話題となり、累計で80万部を突破しているという。

 一部はネット上でも読めるため、筆者も試しに読んでみたがこれは非常に面白い。

 一瞬考えさせられる話、思わず「うまい!」と言いたくなる話がたくさん載っている。

 大人の筆者でも「あ、そういうことか」と少し理解に時間がかかるものもあるので、神田氏が「国語力アップに最適」というのも頷ける。

ひょっとしたら四コマ漫画より速く読めるくらい短い物語ですが、その分だけ行間を読む力や読解力を発揮しないと理解は深まりません。(中略)
四コマ漫画と同じように、わが子が読んでいたら「どこが面白い?」と訊ねてみてください。そうすることによって、「伝達する力」の向上に直結します。(P.72-73)

楽しみながら語彙力アップを目指そう

 語彙力アップと言われると、本を大量に読んだり、辞書と顔を突き合わせていなければならなかったりするような気になる。

 しかし、神田氏のすすめる方法であれば、楽しみながら鍛えることができるのではないだろうか。

 そして、読む楽しさを覚えれば、他の本にも自然と手が伸びるようになる効果もありそうだ。

 国語力アップの入り口として、まずは四コマ漫画から始めてみてはいかがだろうか。