
本記事を執筆している高橋さんは、症状を自覚して数週間以上たってから病院へ行き、診断を受けました。「難聴の勝負は2週間」とよくいわれます。なぜ2週間なのか、2週間を過ぎるとどうなるのか?難聴や耳鳴りに詳しい医師に聞きました。(エディター、ライター 高橋 満)
難聴治療の「ゴールデンタイム」とは
シニアだけでなく、近年、若者の間でも増えているという難聴や耳鳴り。原因としては、長時間イヤホンやインカム、ヘッドホンを使用していることが挙げられますが、他にも、太り気味、生活習慣病を患うリスクが高い、ストレスを感じることが多いといった人も、難聴や耳鳴りが発症するリスクが高くなります(前編)。
ところが実際には、難聴や耳鳴りの自覚症状があっても、医師に相談しない人が非常に多いそうです。馬車道木村耳鼻咽喉科クリニック院長で『1万人の耳の悩みを解決した医師が教える 耳鳴りと難聴のリセット法』の著者である木村至信(しのぶ)先生によると、自覚症状があるのに10年以上放ったらかしにしていたという人もいたとか。
視力が落ちたらほとんどの人は眼科を受診してメガネをかけるし、白内障と診断されれば手術を受けるのに、なぜ聴力が衰えても耳鼻科を受診しないのか。それは徐々に聞こえが悪くなるので、不便になっていることに気づいていても、その状態になんとなく慣れてしまうからだろうと木村先生は考えています。
「突発性の難聴の場合、発症してから2週間以内が「治療のゴールデンタイム」と言われています。発症して2週間以内にステロイド治療をすれば難聴が回復する可能性が高くなりますが、2週間を過ぎるとステロイドの効きが極端に落ちてしまうのです」
発症してすぐに病院に行くと、症状や状態によっては入院治療になるケースもあります。これは外来だとステロイドの一種プレドニンの服用が30㎎が限度なのに対し、入院治療だと250mg程度点滴できるから。投与する量が増える分、免疫力が落ちたり肝機能が悪化したりするため、入院が必要になるのです。