AIが不得意な7つのこと

 一方で、AIの能力を誤解したり、その限界を認識したりしていないのは危険である。AIの能力を過信し、本来AIに任せてはいけない業務まで任せてしまうと、思わぬ失敗をしてしまいかねない。AIには、現状の技術ではどうしても苦手なこと、あるいは任せるべきではないことが存在するからだ。

▼AIが不得意なこと1――倫理的・道徳的な判断

 AIはプログラムされたルールや学習データに基づいて判断するが、人間社会における複雑な倫理観や道徳観、状況に応じた「良識」を理解することはできていない。人の命に関わる判断、差別につながる可能性のある判断、公平性が厳密に求められる場面での最終判断などをAIに委ねることは極めて危険だし、そもそも誰が責任を取るのかという問題もある。

▼AIが不得意なこと2――感情的な配慮・共感

 AIは感情をシミュレートすることはできても、そもそも感情は存在しない。人間のように心から共感したり、相手の気持ちをくみ取ったりすることはできないのだ。クレーム対応の最終判断、部下の悩み相談、チームメンバーのモチベーション向上といった、人間の感情が深く関わる業務には、依然として人間の介入が不可欠である。

▼AIが不得意なこと3――真の創造性・ゼロからイチを生み出す発想

 AIは既存の情報を組み合わせて新しく見えるものを生成することは得意だが、まだ存在しないまったく新しい概念や、人間の感性に基づく独創的なアート作品などをゼロから生み出すことはできない。

 AIは人間の創造性を支援するツールにはなり得るが、創造性の「核」となる部分は人間が担うべき領域である。特にクリエイティブな領域では、アーティストが自分の作品を学習に無断で使われたことで訴訟にまで発展していることをご存じの方も多いだろう。

▼AIが不得意なこと4――複雑な人間関係の理解と交渉

 AIには場の空気を読んだり、相手の表情や声色から真意を読み取ったり、信頼関係を構築したりするといった、高度なコミュニケーション能力はない。重要な商談、部門間の利害調整、チームビルディングなども、引き続き人間同士の対話が必要となる領域だ。