
【グランサム(英イングランド)】ナイジェル・ファラージ氏(61)は4年前、英国の政界で自身にできることはやり尽くしたと判断した。
ポピュリスト政治家であるファラージ氏はそれまで数十年にわたり、英国は欧州連合(EU)からの離脱(ブレグジット)を必要としていると主張していた。英国は独自の規制を設け、欧州大陸から移民が自由に流入して居住・就労することを食い止めるべきだと訴えた。
2021年までにブレグジットは完了し、ファラージ氏も自身の役目は終わったと感じていた。反移民を掲げる政党「リフォームUK」の党首辞任を発表する際にはブレグジットを巡る取り組みについて、「私の成人後の人生の大半を費やした」とし、「もう終わりにする」と述べた。
だがファラージ氏は党首に復帰し、表舞台に戻ってきた。世論調査ではリフォームUKは現在、支持率で首位に立っている。これは主に、予想外の展開によるものだ。ブレグジット後にボリス・ジョンソン首相(当時)率いる保守党政権は新たな移民政策を打ち出し、移民への門戸を欧州からは閉ざす一方で、世界の他の地域からは開放した。政府の狙いは、世界中から優秀な人材を集めることで、低迷する国内経済を活性化することだった。
保守党は移民全体の数を減らすことを繰り返し約束したにもかかわらず、党が設計した制度は早々に管理不能となり、英国史上最大規模の合法移民の流入を招いた。病人や高齢者の介護という一つの職種だけを見ても、政府の当初の予測では年間約6000人の移民が就労目的で英国に来ると想定されていたが、政府の統計によると、実際には4年間で介護職従事者とその家族を合わせて67万9900人が入国した。
2021年から24年にかけて、インド、ナイジェリア、中国を中心に合計で450万人が英国に到着した。現在、英国に住む25人に1人はこの4年間に入国したことになる。
こうした入国の大半は合法的なものだった。だが同時に、不法移民も急増した。毎年数万人規模の亡命希望者が英国に入国し、その多くはフランスから小型ボートで渡ってきた。
米国は長年にわたり不法移民問題に直面してきたが、英国の経験は、国を問わず政府は合法移民の管理にも苦慮することを浮き彫りにしている。また、高齢化が進む国では労働力を必要とすることが多いものの、どの程度移民が純粋に経済的な恩恵をもたらすかについて疑問が生じている。入国した労働者は扶養家族を同伴し、従事するのは低賃金の仕事であることも多く、これは制度が受け入れの前提とするエンジニアや医師の姿とはかけ離れている。