アルツハイマー型認知症において、記憶障害は必須症状です。記憶障害がないと、アルツハイマー型認知症の診断はできません。
「見当識」とは、自分が今いる場所や時間、自分が置かれている状況について理解する知的な能力です。自分に関することがぼやけて、自覚できなくなることを「見当識障害」といいます。最初に侵される見当識は「時の見当識」です。以下、見当識障害の具体的な例を示します。
・今がいつなのか、さっぱり理解していない
・自分が何歳ぐらいなのか理解できていない
・自宅にいるにもかかわらず、「家へ帰る」と主張する
・定年退職して何年も経つにもかかわらず、「仕事に行く」と背広を着て出て行こうとする
・本を冷蔵庫にしまい、生ものを本棚に置く
・自分が何歳ぐらいなのか理解できていない
・自宅にいるにもかかわらず、「家へ帰る」と主張する
・定年退職して何年も経つにもかかわらず、「仕事に行く」と背広を着て出て行こうとする
・本を冷蔵庫にしまい、生ものを本棚に置く
今がいつなのか、時を認識する細胞群は海馬にあり、「時間細胞」といわれています。また、自分が今いる場所を認識する機能も、海馬の場所細胞と嗅内野の格子細胞にあります。生活エピソードも海馬で記憶されていきます。見当識障害の多くは、海馬および自己を認識する脳内ネットワークの衰退とともに起きると考えられます。
「自分は正常」だと装う
「取りつくろい反応」に要注意
見当識障害を基盤にして、認知症の患者に独特なふるまいが生まれてきます。その1つが「取りつくろい(場合わせ)反応」です。「自分は普通に問題なく生活できている」「誰にも迷惑などかけていない」と思い込んでいるために、「正常であることを取りつくろう」態度をとることを指します。
取りつくろい反応を示している人は、医師や看護師の前で「自分が健康である」ことを演出します。薬の服用もでたらめになり、その影響で生活が破綻しかかっていても「薬はきちんと飲んでいます」「食事は自分で作り、三食きちんと食べています」「体調は最高で、困っていることは何もありません」などと語ります。
「健康であることを装う」「その場の雰囲気に合わせて取りつくろう」という態度は、アルツハイマー型認知症の重要な特徴です。アルツハイマー型認知症の患者に接する人は、この点に十分に注意を払って対応しなければなりません。