肉類のタンパク質は消化・吸収されるのに、最終的におよそ3~4時間かかるとされている。脂の多い霜降り肉や、とんかつのように油で揚げた料理になってくると、さらに時間はかかる。脂質は胃にとどまる時間が長く、過度な脂質摂取は胃もたれなど消化器官への負担も大きくなる。

 つまり、「トレーニングが終わってから肉を食べよう!」では、もう合成のピークに間に合わない可能性すらあるのだ。

 魚は調理法によって大きく変わってくる。刺身なら消化・吸収までおよそ2時間以内。煮魚なら3時間以内、焼き魚や揚げた魚は3時間以上かかるといわれている。植物性タンパク質である大豆製品も、消化・吸収に3~4時間程度かかるというデータがある。つまり、タンパク質食材はどれも“即効性”があるわけではないのだ。

 そこで登場するのが、ホエイプロテイン。牛乳の乳清から抽出されるこのプロテインは、1~2時間で血中アミノ酸レベルをグンと上昇させてくれる。これはもう “タンパク質界のスプリンター”と言ってもいい。タンパク質食材が“長距離ランナー”なら、ホエイプロテインは“100メートル走のスプリンター”と言えるだろう。

 では、「プロテインだけでいいのか?」と言われれば、答えはNO。ホエイプロテインで迅速なアミノ酸チャージをしたあとは、24時間(長くて48時間)続く「筋合成の活性化」に備えて、しっかり固形食材からタンパク質を定期的に摂っていく必要がある。

 肉、魚、卵、大豆製品――これらをバランスよく、かつ時間差で摂取していくことで、血中アミノ酸レベルを“持続的に高く保つ”ことができ、絶え間ない材料供給と、筋合成速度の押し上げが可能となる。これが、筋肥大を最適化する“プロの食事設計”なのだ。

 つまり、重要なのは「トレーニングの何時間前に、何を食べるか」「トレーニング直後に何を摂るか」、そして「その後の24時間(~48時間)をどう過ごすか」までを一貫して考えること。

 筋肉づくりは、トレーニングだけでは終わらない。むしろ、トレーニング前後の栄養戦略こそが、筋肉を最大限デカくできるかどうかの分岐点になるのだ。