「一生懸命に考えたのに、思ったように伝わらない」「焦りと不安から自分でも何を話しているかわからなくなってしまう」…。言っていることは同じなのに、伝え方ひとつで「なんでこんなに差がつくんだろう」と自信を失ったとき、どうすればいいのでしょうか?
コンサルタントとして活躍し、ベストセラー著者でもある田中耕比古氏の著書『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』から、優秀なコンサルが実践する「誰にでもできるコミュニケーション術」を本記事で紹介します。

「型」を使ってあとから流れを戻す
もちろん、人間ですから、いつも冷静というわけにはいきません。
初対面の人と話すというだけで緊張します。
想定と違う方向に話が進むと、ドキドキするでしょう。
機嫌が悪そうに見えるけど、怒っているのかな……。
資料をどんどん先にめくって、まだ話していないページに進んでしまっているけど、私の話す内容に興味がないんだろうか……。
この人は、次に何を言うつもりなのだろう……。
このまま話が明後日の方向に行ってしまったら、自分ではコントロールできないんじゃないか……。
他にも伝えないといけないことがあったのに、この脱線具合だと時間切れになってしまって話せないんじゃないか……。
そんな不安を感じることもあります。
そうした場合の、安心材料となるのが「型」です。
相手が不機嫌だろうと、話の内容に興味を持っていなかろうと、とりあえず「まずはこの話をすればいい」「そのあとは、この順番で話せばいい」ということが決まっていれば、心は落ち着きます。
話がどんどん違う方向に進んでいったとしても「ひと段落ついたら、この部分に話を戻すようにしよう」と心に決めたり、「もし時間切れになったら、『今日はたいへん盛り上がって最後まで行けなかったのですが、この部分まではお話しできたので、次回はその続きとして、この話から始めさせてください』と言ってアポイントメントを取ろう」と考えたりしておけば、冷静でいられます。
不思議なもので、ひとたび心が落ち着けば、議論全体を俯瞰する余裕が出てきます。
好き勝手に話している人たちの表情などを観察することもできるようになるのです。
その場を見渡して、どういう感情が渦巻いているのか、どういう力関係があるのかなどを把握することもできるでしょう。
こうなればしめたものです。その場で一番偉い人、発言力の強い人が話し終わった瞬間に、それに被せるように発言して、元の議論に戻そうという作戦も立てられます。
そのように「考えながら行う会話」を重ねていくと、自分の中に経験則が積みあがっていきます。
最初のうちは、「今回はうまくいったけど、なぜなのだろう」と自分でもわからないこともあると思います。反対に「あの流れでうまくいくと思ったが、なぜかダメだった」ということもあるでしょう。
そういう体験を振り返り、反省していく中で、少しずつ「この流れがよかったんだな」「あのタイミングで、ああいう方向に持っていったのが効いたな」「この順番・流れも成功パターンとして覚えておこう」というふうに成功体験が増えていきます。
(本記事は『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』の一部を抜粋・編集したものです)