一生懸命に考えたのに、思ったように伝わらない」「焦りと不安から自分でも何を話しているかわからなくなってしまう」…。言っていることは同じなのに、伝え方ひとつで「なんでこんなに差がつくんだろうと自信を失ったとき、どうすればいいのでしょうか?
コンサルタントとして活躍し、ベストセラー著者でもある田中耕比古氏の著書『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』から、優秀なコンサルが実践する「誰にでもできるコミュニケーション術」を本記事で紹介します。

人を動かすとき「ただ言う」のは三流。「論理的に説得する」のは二流。では、一流はどう人を動かす?Photo: Adobe Stock

一流は「説得」ではなく、「納得」を目指す

「伝える力」と聞いたときに、どんなイメージを思い浮かべますか?

 理路整然と説明し、疑問を差し挟む余地などない。

 一分の隙もない論理構造で、相手が思わず「なるほど」とうなずく。

 自信に満ちあふれた態度で話し、伝えた主張をすべて受け入れてもらえる。

 確かに、そういうことができる人は、「説明がうまい」と評価されます。

 しかしながら、こうした特徴は、実は「説明」がうまいのではなく「説得」がうまい人の特徴です。

 もちろん、説得することも大切です。説得では、相手に有無を言わせず、こちらの主張を通すことが優先されます。特に、仕事の上ではそういう状況も多いでしょう。

 ただ、常に説得によって「思い通りに相手をコントロールする状態」を目指してしまうのは考えものです。

 私たちが「伝える」ということに向き合うとき、本当に目指すべきは、相手を思い通りに「説得」することではありません。

 聞き手が、こちらの話を聞いて「納得」してくれることが最も大切なのです。

「説得」は、話し手の正しさを、聞き手に受け入れてもらう行為です。

 どうなって欲しいのか、どういうふうに感じ、どういうふうに動いて欲しいのか。

 そういう希望、願い、思いを実現するために、相手をコントロールするのが「説得」です。

 一方、「納得」は、聞き手の価値観や考え方、また事情などを尊重した上で、話し手の主張内容を正しく理解してもらうことを目指します。

「説得」は、話し手が主導権を握って聞き手をコントロールしようとしますが、「納得」は、話し手と聞き手の関係性がポイントになります。

 いくら正しいことを主張したとしても、結論がこちらの思い通りになるかどうかは、相手の状況によります。

 例えば、相手がいま使っている商品よりも、今日、自分が提案している商品のほうが安くて便利だとします。しかし、相手が「買い換えたばかり」だったとしたら、説得することはできません

 あるいは、すでに今年の予算が決まっているときに、予算を超えた提案をされても、その商品・サービスを導入することはできません。

 最後の決定権は、常に聞き手にあります。

 聞き手の状況、事情をコントロールすることは、基本的にはできないのです。

 だからこそ、私たちが目指すべきゴールは「納得」です。

 言っていることはわかる。理解できる。合理的に評価して、正しいと思う。

 そういうふうに思ってもらえれば、「伝える」目的は十二分に達成されています。

(本記事は『コンサルだけが知っている 伝え方のテンプレ』の一部を抜粋・編集したものです)