次男の奨学金を、退職金で返済しようとしたら……
専業主婦のWさん(52)は、「夫の退職金で返済するとかなりの額がなくなります。老後をどうしたらよいでしょうか」と相談に来ました。Wさん家族は会社員の夫(56)と、社会人の長男(25)、大学4年生の次男(22)の4人暮らしです。 Wさんご夫婦は、夫の収入で貯蓄を作り、マイホームや長男の大学進学の費用をまかなってきました。高校授業料無償化などの制度が十分ではなかった時代でも、何とか必要な支出を工面しながら生活してきたのです。
しかし、次男が大学に入学する頃には、住宅ローンと長男の学費の支払いに追われ、次男の学費を十分に用意できない状況に。やむなく次男には奨学金を利用してもらうことにしました。卒業までの4年間で240万円を借りる予定です。長男は貯蓄で、次男は奨学金で大学に通うという不公平な状況を避けたいと考えたWさんご夫婦は、奨学金の返済を親が肩代わりすると約束しました。
何とかやってきたつもりでしたが、実は長男が大学に入学する前から、月の支出が収入を上回る赤字家計が常態化していました。不足分は夫のボーナスや貯蓄で補塡(ほてん)していましたが、この生活を続けるうちに、次男の大学卒業を目前にして、貯蓄と呼べるものはほとんどなくなってしまったのです。
夫はあと4年で定年退職し、60歳で約1800万円の退職金を受け取り、その後は再雇用で働く予定です。しかし、現状では住宅ローンの残債が約800万円あり、1年後には次男の奨学金240万円の返済も始まります。再雇用でしっかり稼ぎ、家計を改善して黒字化しなければ、退職金が目減りしていくことは十分予想できます。
退職金だけでは、老後資金も、親の介護にかかるお金も足りない?
さらに、もう一つの不安もあります。隣に住む夫の両親の介護です。体力や手間の面での協力だけでなく、将来的には生活費や介護費の金銭的な援助も必要になる可能性が高いのです。Wさんは、約1800万円の退職金は自分たちの老後資金として期待できないのではないかと、不安を募らせました。
お金の不安を軽減するには、まず家計の黒字化が必須です。そして、もっとも手っ取り早いのは支出を減らすこと。Wさんの夫は定年が目前に迫り、妻が働きに出るなど新たな収入源を確保しない限り、収入増が見込めない年代です。黒字化を目指すには、奨学金の返済を次男に任せることも選択肢の一つになるはずですが、Wさんはそれを受け入れません。子どもとの会話もすべきでしょう。