次男は自身が返済する可能性を考え、大学が斡旋する給付型奨学金の利用を申し出ていました。しかし、Wさんは、卒業後の就職先に制限がかかると将来の選択肢が狭まるという理由で申請を許可せず、JASSO(日本学生支援機構)の第二種奨学金のみを利用させました。このような経緯もあり、親が返済するという約束を覆すことはできないと考えているのです。

 返済額は月に約1万4000円。これが15年ほど続きます。教育費の負担は減ったように見えますが、毎月の支出が1万4000円増えるのは、年金生活に入ると大きな負担ともいえるでしょう。

Wさん夫妻が今やるべきことは?

 今は、親の介護問題をいったん置いておき、まずは家計を黒字化すること、そして働けるうちに少しでも老後資金を蓄えることが先決です。そのためには支出をしっかり見直し、できればWさん自身も働きに出ることを検討する必要があります。少額でも投資を始められれば、少しは将来の展望が開けるかもしれません。 しかし、支出について、Wさんは奨学金の返済は前述の通りですし、それ以外の支出も「減らすと○○が困るから」と、なかなか削減できる部分が見つかりません。さらに、自分が働きに出ると、夫や子どもが帰宅したときに困るからと、八方ふさがりな状況に陥っています。

 教育費が落ち着いても家計の黒字化は困難で、不安は増す一方です。「子どものため」と思ってやってきたことかもしれませんが、支出の上限を冷静に判断できず、家計改善を先送りしてしまったのです。

 親の気持ちもわかりますが、子のためにも、まずは親が生活基盤を強くすることが大事ではないでしょうか?

 教育費と老後資金は、常に「綱引き」の関係にあると私は考えています。どちらか一方に力を入れすぎると、もう一方がおろそかになってしまいます。教育費は親が負担すべきものだと考えられがちですが、今は逆に「親が全額負担しなくてもよい」時代でもあります。必要な資金をてんびんにかけ、それぞれのバランスが保てるような着地点を見つけるために、お金の使い方を工夫する必要がある家庭は多いのではないでしょうか。