
「投資をしたほうがいいでしょうか」と相談にやってきた55歳女性。夫と二人暮らしの家計は、よく聞くと「毎月7万円の黒字なのに貯金が50万円しかない。お金が貯まらない」というのです。話をよく聞いてみると、10年前のある出来事が尾を引いて、お金が貯まらない行動を繰り返していました。一見健全な家計に潜む「隠れ貧乏」の実態と、投資よりも先に解決すべき根本問題とは?(家計再生コンサルタント 横山光昭)
60歳目前、“起死回生の一手として投資を始める”人
多くの方は「老後に向けてお金の準備は必要だ」と考えていることでしょう。「節約しているし、働いてもいる。でも、十分な貯金ができていない。ならば、ここで起死回生の一手として投資を始めるべきでは?」。そんなふうに考える人は少なくありません。特に60歳を目前に控えた方々の中には、焦るように投資へと目を向ける方もいらっしゃいます。しかし、そうしたケースを見るたびに、私は不安を覚えます。
もちろん、投資自体を否定するわけではありません。ただし、一度立ち止まって、「本当に今、自分は投資をするべきなのか」「家計の中で、あるいは家計以外で改善できる点はないか」を冷静に見極めることが不可欠です。そうした検証をしないまま投資を始めてしまえば、かえって状況を悪化させ、安定した生活が遠のく可能性すらあるのです。