
「教育費のためにあなたの社内預金を少し回してほしい」「そんなことをしたら老後の備えが足りなくなる」家計相談の現場で、夫婦が面談中に言い合いになってしまうことは珍しくありません。財布を完全に分けて生活するDさんご夫妻も、お金の価値観の違いに悩む典型例でした。相続資金1300万円を教育費にすべて投じるつもりの妻と、1000万円の社内預金を死守する夫。このままでは老後資金が足りなくなるのに、互いの主張は平行線のまま……価値観の違いを乗り越える方法はあるのでしょうか?(家計再生コンサルタント 横山光昭)
夫婦でお金の価値観がまったく合わないと、話し合いができない
家計相談を受ける中でよく耳にするのが、「夫婦でお金の価値観がまったく合わず、話し合いにならない」という声です。中には、面談中にそのまま言い合いになってしまうご夫婦も少なくありません。
それぞれが「これだけは譲れない」というお金の使い方を持っているからこそ、衝突が起きるのです。しかし、夫婦は人生を共に歩むパートナー。歩み寄る姿勢がなければ、話し合いは平行線のまま。「こんなはずではなかった」と後悔することにもなりかねません。
今回ご紹介するDさん夫妻も、まさにお金の価値観の違いに悩んでいました。
完全別財布で生活する夫婦、それぞれの「お金の価値観」
「夫とお金の考え方がまったく違って、家計の管理が難しい」と相談に来た、パート主婦のDさん(54歳)です。会社員の夫(56歳)とは財布を完全に分けて生活しており、「一緒に家計管理なんてとても無理です」と話します。
Dさんの手取りは月18万円、夫は約40万円。生活費は基本的に「折半」で、それぞれ15万円ずつ出し合って30万円でやりくりしています。ただし実際は、教育費や突発的な出費に対応するため、ご主人がさらに10万円を上乗せしているのが現状です。