中国の「寝そべり族」と韓国の「ただ休んでるだけ現象」。世界中で広がる怠惰の流れとは何か。
次々と新たなビジネスを仕掛ける稀代の起業家、佐藤航陽氏。「これからどう生きるか?」を徹底的に考察した超・期待作『ゆるストイック』を上梓した。これからの生き方として重要なキーワードは、「ストイック」と「ゆるさ」。令和のヒーローたち(大谷翔平、井上尚弥、藤井聡太…)は、なぜストイックに自分に向き合い続けるのか。『ゆるストイック』では、「どのように日常を過ごしていくべきか」を言語化し、誰でもできるプロセスとしてみなさんに共有する。(構成/ダイヤモンド社・種岡 健)

中国の「寝そべり族」
近年、中国や韓国で若者を中心に広がっているのが、中国の「寝そべり族」、韓国の「ただ休んでるだけ」現象です。
過酷な競争社会への諦めや抵抗を背景にしたこのムーブメントは、単なる怠惰ではなく、社会構造そのものに対するリアクションとして注目されています。
「寝そべり族」とは、就職や結婚、マイホーム取得といった社会的成功を目指さず、最低限の生活で満足する若者たちを指します。
中国の高度経済成長は格差を拡大させ、都市部の若者がどれだけ努力しても中産階級の生活を実現できない状況が広がりました。
その結果、あえて競争から降りる選択が一つのライフスタイルとして共有されているのです。
韓国の「ただ休んでるだけ」
韓国でも「ただ休んでるだけ」という言葉が若者の間で流行しました。
これは失業者の増加や住宅価格の高騰といった厳しい環境の中で、「頑張る意味を見失った」若者が、自らの状況を自虐的に表現する言葉です。
韓国社会は学歴競争と労働時間の長さで知られていますが、その先に見える未来が不透明であるため、努力そのものを放棄する層が出てきています。
共通する「背景」と「課題」
両国に共通するのは、「努力すれば報われる」という物語が機能しなくなっている点です。
競争社会の頂点に立てるのは一握りであり、大多数は過剰な努力を強いられても成果を得られません。
結果として、無理に走り続けるよりも、あえて立ち止まることを選ぶ人が増えています。
しかしこの姿勢は、短期的には心を守る一方で、長期的には停滞や格差の固定化を招くリスクがあります。
中国の「寝そべり族」と韓国の「ただ休んでるだけ」現象は、努力が報われにくい社会構造に対するリアクションです。
単なる怠惰ではなく、合理的な防衛策でもあります。
ただし、完全に競争から降りてしまうと停滞が続きます。
必要なのは、無理をせず、それでも小さな積み重ねを続ける姿勢です。
私たちもまた、過剰な競争に巻き込まれず、ゆるストイックに生きましょう。
株式会社スペースデータ 代表取締役社長
1986年、福島県生まれ。早稲田大学在学中の2007年にIT企業を設立し、代表取締役に就任。ビッグデータ解析やオンライン決済の事業を立ち上げ、世界8ヵ国に展開する。2015年に20代で東証マザーズに上場。その後、2017年に宇宙開発を目的に株式会社スペースデータを創業。コロナ禍前にSNSから姿を消し、仮想現実と宇宙開発の専門家になる。今は、宇宙ステーションやロボット開発に携わり、JAXAや国連と協働している。米経済誌「Forbes」の30歳未満のアジアを代表する30人(Forbes 30 Under 30 Asia)に選出される。最新刊『ゆるストイック』(ダイヤモンド社)は8.5万部を突破した。
また、新しくYouTubeチャンネル「佐藤航陽の宇宙会議」https://youtube.com/@ka2aki86をスタートさせた。