また、出版関係者や編集者なども、スパイにとっては非常に魅力的なターゲットです。
彼らが持つネットワーク、人脈、連絡先リストといった情報は、それ自体が“資源”なのです。
講演会などで、よく、
「私なんかをスパイが狙う意味があるのですか?」
と質問されることがありますが、それは大きな誤解です。スパイは、ターゲット自身ではなく、「その先」にある情報やアクセスを狙っているのです。
たとえば、あなたのパソコンにあるパスワードや、あなたが知る関係者の名刺データ、社内ネットワークへのアクセス経路――こうしたものを踏み台にして、次の段階へ進もうとする。つまり、「あなた自身を使って、より大きな対象に到達する」のが目的なのです。
だから、自分が目立たない立場だからといって安心してはいけません。たとえ総務部の一担当者であっても、重要な扉の鍵を持っている可能性がある以上、十分に注意すべきなのです。
スパイの手口や思考パターンを知ることは、自衛の第一歩です。「あっ、これは怪しいな」と察知できるかどうかで、結果は大きく変わります。
私たちの社会は、すでに“情報戦の最前線”にあります。その自覚を持つことが、すべてのスタートになるのです。