スパイは日本の「何を」狙っているのか?
では、特にどの分野を狙っているのか? と問われれば、答えは「最先端技術とその周辺情報」です。たとえば、近年であればスマート農業、水耕栽培、無農薬野菜の栽培ノウハウなど最先端の農業技術。これらは一見、平和的な分野に見えますが、食料安全保障の観点では極めて戦略的価値が高く、中国にとっても喉から手が出るほど欲しい分野です。
もちろん、通信や光学レンズ、さらには特許申請前の技術情報なども対象となっています。日本の5G技術や衛星通信の分野も軍事転用が可能なため、常にターゲットとされてきました。
ロシアもこうした情報を狙っていますが、中国はそれを凌ぐ規模と執着心で動いているのが現実です。
さらに、狙われているのは“もの”だけではありません。人も、情報も、ネットワークも対象になります。自衛隊や海上保安庁、防衛産業に関係する企業、たとえば、三菱重工のような防衛企業も当然ながらマークされています。
軍事的機密情報だけでなく、組織の構造やセキュリティーの穴も含めて、ありとあらゆる角度から狙ってくるのが中国の手口です。
一般人もスパイのターゲット!
また、メディア関係者、評論家、学者といった“言論空間”に影響を与える存在もターゲットにされています。これは旧KGBの流れを汲むロシアのFSB(ロシア連邦保安庁)やSVR(ロシア対外情報庁)が得意とする世論工作と同様、中国も「情報戦」の一環として行っているものです。
たとえば、「中国御用達学者」と呼ばれる人々の存在も問題視されています。中国に有利な論文や記事を書く見返りに、高額な報酬を提示する――これが“飴”です。
逆に、現地での訪問時に仕掛けられた“ハニートラップ”などで、後に脅迫材料となる写真や映像を撮られ“鞭”として利用されることもあります。
「あの写真をバラされたくなければ、協力してほしい」といわれたら、断るのは容易ではありません。