
2025年7月「高血圧管理・治療ガイドライン2025」(日本高血圧学会編)が6年ぶりに改訂された。
高血圧の基準は「診察室血圧140/90mmHg以上、家庭血圧135/85mmHg以上」で据え置かれたが、診断後の降圧目標は、年齢や性別、糖尿病などの基礎疾患や既往症にかかわらず「診察室血圧130/80mmHg未満、家庭血圧125/75mmHg未満」に統一。治療目標をシンプルにすることで、受診や治療をサボりがちな患者の意識を引き締める意図があるようだ。
滋賀医科大学の研究者らは、診療報酬明細書データ(05~22年)を基に、健康診断で高血圧を指摘された人の1年以内の治療動向を調べている。
それによると、速やかな受診が勧められる「II度高血圧160/100mmHg以上」を指摘された6万3785人(年齢の中央値50歳、男性75.3%)のうち、健診後3カ月以内に医療機関を受診したのは3万4789人(54.5%)、健診後3カ月以内に降圧剤を処方された人は1万0596人(16.6%)にとどまった。
さらに1年間の追跡データがある3万3175人を解析した結果、17.7%が健診後3カ月以内に受診、1年以内に降圧剤の服用を開始したのに対し、36.9%は3カ月以内に受診したものの未治療のまま放置していた。39.5%は受診も治療もしていなかった。残る5.9%は健診後の受診勧奨は無視したが、1年以内に降圧剤を飲み始めていた。
当然、健診後1年時点で最も血圧が低かったのは健診後3カ月以内に受診し治療を始めた群で、136/87mmHg(平均値、以下同)まで下がっていた。3カ月以内は未受診だが、1年以内に治療を始めた群も137/88mmHgに低下している。一方、3カ月以内に受診するも未治療の群は150/97mmHg、完全放置の群も154/99mmHgと高いままだった。
また未治療の群は、1年以内に降圧治療を始めた群よりも年齢が若く、肥満気味で週に3回以上朝食を抜く傾向があった。シフト勤務形態や生活習慣の課題がうかがえる。何らかの社会的なアプローチも必要だろう。
高血圧が将来の脳・心血管疾患リスクであることは既に確立されている。健診の指摘は無視せずに、少なくとも一度は病院を受診しよう。
(取材・構成/医学ライター・井手ゆきえ)