「お金のこと、周りの人より苦手かも……」。そう思ったこと、ありませんか?
「計画的に貯金しよう!」という意思はあるのに、できない。というか、気づくと必要ないモノを買ってしまう……など。こういったお金の困りごとは、あなたが怠けているからではなく、性格のせいでもなく、もしかしたら「脳の仕組み」のせいかもしれません。
この連載では、年間100世帯以上の相談にのっている発達障害専門のFPで自身もADHD当事者である『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』の著者・岩切健一郎氏が、お金について解説します。
発達障害の人も、そうじゃない人にも役立つヒントが満載です。
※現在、正式な診断名は「発達障害」から「神経発達症」へ変更になっていますが、この連載では広く知られている「発達障害」という表現を用います。

ADHDの衝動買いは「気のせい」じゃなかった!?
ADHDである私は、数々の衝動買いをしてきました。予定になかった50万円の高級ベッドを即買いしたり、ボーナスを立ち食い寿司で溶かしたりと、私の人生と衝動買いは切っても切り離せません。
ADHDの衝動買いは、海外の査読論文で繰り返し確認されています。
2024年のある研究[1]では、
「衝動買いの傾向が強い」
「待つ力(満足を先送りする力)が弱い」
ということが証明されています。
ADHDの人が「また買っちゃったよー」「衝動買いがひどくて」というのは単純なあるあるに留まらず、論文でちゃんと証明されているんですね。
また、報酬の先送りをどれだけ嫌うか(遅延割引)をまとめたメタ分析[2]では、
という傾向が明確に結果として現れました。
どういうことかというと、目的のために我慢してお金を貯めるよりも、今の欲求を満たすために買い物をする人が多いということですね。
ADHDの特性(脳の働きの傾向)とお金の相性の悪さは、論文で証明されているレベルのことだったのです。
こういう特性を持っていると、「やればできる!」の根性論ではどうにもなりません。仕組みで解決するしかないんですよね。
一般論としてのお金の知識が役に立たない!
FPである私のところに実際に相談に来られるお客様の中には
「一般的なお金の本に書いてあることは試してみたけど、衝動買いに勝てなかった」
という方も少なくありません。
一般的なノウハウは、特性がない人向けに書かれているので、発達障害の当事者や特性がある人からすると、ちょっともの足りないんですよね。
特性があるからこその仕組みを作る。それでもだめなら、使おうと思っても物理的に使えない状態を作り出すことが大切です。例えば、「キャッシュカードを人に管理してもらう(暗証番号は教えない)」「キャッシュカード自体を簡単には取れない場所に保管する」など。
とにかく大切なのは、気合いや根性でなんとかしようとしないこと。
論文で証明されている脳の傾向を、気合いや根性ではどうにもできませんよね。だから、気合いや根性を使わなくていいように工夫することが大切です。
これまで「単純なあるある」だと思っていたことが論文で証明されると、なんだかスッキリしますよね。当事者の実感は正しいのだなと改めて思います。
他にもADHDとお金の相性の悪さはいろんな論文で証明されています。私は当事者であり、発達障害の人のお金管理の専門家でもあるので、他にも興味深い論文を紹介していこうと思います。
(本記事は、『発達障害かもだけど、お金のこと ちゃんとしたい人の本』の著者・岩切健一郎氏が特別に書き下ろしたものです。)